アンバサダーマーケティングとは?インフルエンサーとの違いと進め方
「アンバサダー」という言葉が指すものは一つではありません。フォロワーの多いインフルエンサーと年間契約を結んでブランドアンバサダーと呼ぶケース、商品提供と引き換えに投稿してもらう一般ユーザーを公募で集めるケース、熱量の高い愛用者を任命して商品開発にも意見をもらうケース。いずれもアンバサダー施策として語られていますが、目的は認知の獲得、UGCの量産、顧客との関係構築と、それぞれ異なります。
そのため「アンバサダーマーケティングを検討したい」という話が出たとき、社内の参加者が別のものを思い浮かべたまま議論が進むことが起こります。誰に声をかけるのか、何を依頼するのか、何をもって成果とするのか。この3点が揃わないまま進めると、実施しても通常のPR投稿と変わらない結果に落ち着いてしまいます。
この記事では、インフルエンサー・アンバサダー・エヴァンジェリストという3つの立場を整理したうえで、候補者を見極める視点、プログラムの設計手順、そして「本音で推奨している」と受け手に伝わる施策の組み立て方までを解説します。読み終えたときに、自社でアンバサダー施策を進めるべきか、進めるなら何から着手するかを判断できる状態を目指しています。
この記事でわかること
✔インフルエンサー・アンバサダー・エヴァンジェリストの違い
関係の起点と継続期間という2つの軸で見ると、3つの立場は役割が重ならない。自社の課題に対してどれを選ぶべきかを判断できる。
✔アンバサダー候補を見極める4つの視点
愛用・リピート・本音・推奨という観点から、フォロワー数に頼らない選定基準が身につく。
✔「本音で推奨している」と伝わる施策の設計
顧客の声を起点にキャンペーンへつなげる流れを理解し、単発で終わらないプログラムを組み立てられる。
1. アンバサダーマーケティングとは
ブランドの愛用者を起点にした施策
アンバサダーマーケティングとは、自社の商品やサービスを実際に使い、好意を持っている人を「アンバサダー(大使)」として任命し、その発信を通じてブランドの価値を伝えていく手法です。アンバサダーという言葉は本来「大使」を意味し、組織を代表して外部に立つ役割を指します。
最大の特徴は、企業とアンバサダーのあいだに任命という合意があり、関係が一定期間続くことです。単発のPR投稿とは異なり、複数回の発信、イベントへの参加、商品開発への意見提供など、活動の幅も広くなります。ブランド側から見れば、発信のたびに一から関係を作り直す必要がなく、回を重ねるごとに商品理解の深い発信が出てくるという構造になります。
なぜいま改めて注目されているのか
背景にあるのは、購買の意思決定において生活者同士の発信が占める比重の高まりです。
エクスクリエの調査(2026年8月)によると、SNSや動画サービスの情報を参考に直近で購入した商品について、購入決定に最も影響した発信者を聞いたところ、「一般ユーザー(商品の感想を投稿しているなど)」が食品・飲料・菓子で28.1%、日用品・生活消耗品で34.7%、コスメ・スキンケアで25.2%と、いずれのカテゴリーでも最多となりました。企業の公式アカウントでも、著名なインフルエンサーでもなく、名前も知らない生活者の投稿が最後のひと押しになっているということです。
関連記事:【エクスクリエ調査レポート】SNS・動画サービスにおける購買行動に関する調査(2026年)
アンバサダーマーケティングは、この「一般ユーザーの発信」を偶然任せにせず、意図をもって設計する取り組みだと言い換えられます。自然発生の口コミを待つのではなく、口コミが生まれやすい状態をブランド側から用意するという発想です。
商材によって効きやすさが変わる
ただし、すべてのカテゴリーで同じように機能するわけではありません。同調査では、ファッション・アパレルにおいてのみ「企業やブランドの公式アカウント」が30.2%で最多となっています。世界観やシーズンごとの提案そのものが購買理由になる商材では、公式からの発信が強い影響力を持つということです。
一方、日用品や食品、コスメのように「実際に使った人がどう感じたか」が判断材料になるカテゴリーでは、生活者の発信が意思決定を左右します。自社の商材がどちらの性質に近いかを最初に見極めておくと、アンバサダー施策に割く予算とリソースの妥当性を社内で説明しやすくなります。
2. インフルエンサー・アンバサダー・エヴァンジェリストの違い
3つを切り分ける2つの軸
この3つは実務で最も混同されやすい言葉です。整理するときは、次の2軸で見ると迷いません。
ひとつは関係の起点がどちらにあるかです。企業側からの依頼で始まるのか、本人の好意が先にあるのか。もうひとつは関係が続く期間です。1回の投稿で終わるのか、数か月から数年にわたるのか。この2軸で置いてみると、3つの立場はきれいに並びます。
インフルエンサー:影響力を借りて届ける
インフルエンサーは、自身のフォロワーに対する影響力を持つ発信者です。起点は企業側の依頼にあり、報酬が発生します。ブランドへの個人的な好意は前提とされておらず、ブランドへの好意に関係なく、仕事としてブランドをPRする立場だと整理できます。
これは短所ではありません。まだ誰にも使われていない新商品を、短期間で広い層に届けるには、この形が最も速く確実です。競合ブランドの案件を並行して受けることも一般的で、それを前提に設計するのがインフルエンサー施策です。
アンバサダーには2つの型がある
アンバサダーという言葉は、実は性質の異なる2つの施策に使われています。
ひとつは著名人任命型です。ラグジュアリーブランドが俳優やモデルをブランドアンバサダーに起用するケースがこれにあたります。起点は企業側にあり、その人の影響力とイメージを借りるという意味で、性質としてはインフルエンサー起用に近いものです。
もうひとつが一般ユーザー型で、日常的に商品を使っている顧客を公募またはスカウトして任命します。近年「アンバサダープログラム」と呼ばれるのは主にこちらで、性質としては次に述べるエヴァンジェリストに近くなります。
なお一般ユーザー型のなかでも、投稿数や写真・動画素材の獲得を主目的とするものと、少人数と深く関係を築いて商品開発の意見までもらうものでは、必要な運用がまったく違います。前者は募集の規模と条件設計が要になり、後者は日々のコミュニケーションが要になります。
社内で「アンバサダーをやりたい」という話が出たとき、どちらを指しているのかを最初に揃えておかないと、必要な予算も期待できる成果もまったく違うものになります。
エヴァンジェリスト:依頼がなくても勧めてくれる
エヴァンジェリストは元々ブランドのことが好きで周りに勧めてくれる人です。企業との間に任命や報酬の取り決めがあるわけではなく、企業が把握していないところで推奨が起きていることもあります。
なぜこの立場がいま重視されるのか。商品のコモディティ化が進むなかで、ユーザーが求めているのは「リアルと生感」だからです。加えて、景品表示法の観点から「生感」をブランド側が直接訴求することが難しくなり、市場には類似商品が並んでいます。こうした条件が重なった結果、リアルに商品を愛用していて、継続利用している人が、本当に良いと推奨しているという生感そのものが価値を持つようになりました。

アンバサダー施策のゴールを一言でいえば、社内から見えていないエヴァンジェリストを見つけ出し、発信しやすい環境を整えることだと言えます。
ファネル上の役割で考えると重複しない
3つの使い分けに迷ったときは、マーケティングファネルのどこを埋めたいかで考えると整理できます。
インフルエンサーが強いのは、認知から比較検討にかけての新規顧客獲得の領域です。対してアンバサダーやエヴァンジェリストは、購入後のリピートから推奨へつながる既存顧客育成の領域で力を発揮します。
なおアジア圏のインフルエンサー施策では、専門分野に特化して支持を集めるKOL(Key Opinion Leader)とフォロワーとの距離が近く購入の意思決定につながりやすいKOC(Key Opinion Customer)という区分も使われます。アンバサダー候補として現実的なのは後者に近い層です。フォロワー規模ではなく、生活者としての距離の近さが機能する領域だからです。

つまり、発売直後でまだ愛用者がいない商品にアンバサダー施策を仕掛けても、素材となる声がありません。逆に、発売から時間が経ち一定の顧客基盤がある商品に、認知目的のインフルエンサー施策だけを繰り返しても、すでにいるファンの力は使われないままです。どちらが優れているかではなく、いま埋めたい穴がどこにあるかで選ぶことになります。
3. アンバサダーマーケティングのメリットと限界
同じ生活者としての発信は信頼されやすい
アンバサダーの発信が受け入れられやすいのは、受け手と発信者の立場が近いためです。プロの発信者による洗練されたレビューよりも、自分と同じように商品を買い、生活のなかで使っている人の言葉のほうが、判断材料として現実味を持ちます。
とくに良い点だけでなく「ここは自分には合わなかった」といった記述が含まれている投稿は、内容の信憑性を大きく引き上げます。ブランド側にとっては受け入れにくい部分もありますが、この余白こそが信頼の源泉です。
接触が積み上がる
ブランドの価値を1〜2回の接触で伝えきるのは困難です。アンバサダーとの関係が数か月から数年単位で続けば、同じ人が季節や使用シーンを変えながら繰り返し発信することになり、フォロワーは商品を多面的に理解していきます。
さらにアンバサダーのフォロワーは、その人の価値観やライフスタイルに共感して集まった層です。年齢や性別といった属性だけでは切り取れないターゲティングが、結果として実現されます。
顧客の声が集まる
アンバサダー施策の副産物として見落とされがちなのが、顧客の声が継続的に集まることです。実際に使い続けている人から、使い勝手の不満、想定外の使い方、パッケージへの意見などが上がってきます。
これらは調査では拾いにくい定性情報です。商品改善や次の訴求軸の検討に直接使える材料として、施策の成果を売上以外の面でも社内に説明できる要素になります。既存顧客との関係を深めてLTVを高めるファンマーケティングの一環として位置づけると、社内での意味づけもしやすくなります。
成果までのスピードとリーチは出づらい
一方でアンバサダー施策には明確な限界があります。まず成果が出るまでに時間がかかります。候補者を見つけ関係を築き、発信が積み上がるまでには数か月単位を見込む必要があります。
リーチ量も著名なインフルエンサーの起用と比べれば限定的です。新商品の発売に合わせて一気に認知を取りたい、といった場面には向いていません。この点は、短期のインフルエンサー施策や広告と組み合わせて補う前提で考えるのが現実的です。
「発注コスト」と「運用コスト」を分けて考える
アンバサダー施策は低コストで始められる手法として語られることがありますが、実務ではコストを2種類に分けて考える必要があります。
ひとつは発注コストです。一般ユーザー型のアンバサダーの場合、1投稿あたりの金銭報酬は、著名なインフルエンサーへの発注と比べれば抑えられます。マス広告やリスティング広告と比較すれば、比較的低コストで運用できる施策と言えます。
もうひとつは運用コストです。候補者の選定、日々の連絡、商品の発送、投稿内容の確認、コミュニティの運営。これらは毎月発生し続ける業務であり、担当者リソースを確実に消費します。1年続けられる体制があるかどうかを、着手前に確認しておくべきポイントです。ここを見積もらずに始めると、半年で発信が止まり、任命したアンバサダーとの関係だけが宙に浮くことになります。
4. アンバサダー候補の見つけ方と選び方
候補は既存顧客の中にいる
アンバサダー候補を外部に探しにいく前に、まず自社のなかを見ます。すでに商品を買い、良い印象を持っている人がいるはずだからです。主な経路は次の3つです。
- 自社SNSへの反応から探す
メンションやタグ付き投稿、コメントの履歴をさかのぼると、複数回にわたって自社商品に触れているアカウントが見つかります。頻度と熱量の両方を確認できるため、精度の高い経路です。 - レビューやアンケートから探す
ECのレビュー、問い合わせ、キャンペーン応募時のアンケート自由記述には、熱量のある文章が残っています。SNSアカウントの有無は別途確認が必要ですが、言語化の力を先に見られる利点があります。 - 購買データから探す
定期購入や複数回購入の履歴は、好意を最も客観的に示すデータです。ただし発信の意思があるかは別問題なので、打診の段階で丁寧に確認します。
【見極めたい4つの視点】
候補が挙がったあと誰に声をかけるかを判断する軸として有効なのが、効果の高い投稿に共通する4つの問いです。

・愛用しているか
実際に日常のなかで使っているかどうかです。提供された商品を一度試しただけの状態では、発信の内容がどうしても表面的になります。
・リピートしているか
1回きりではなく買い直しているかどうか。継続購入という事実は、あとから演出できないものです。この点が確認できる候補者は、発信の説得力が構造的に高くなります。
・本音で話しているか
過去の投稿を見て、良い評価だけを並べていないかを確認します。他の商品について率直な感想を書いている人ほど、自社商品を評価したときの言葉も信用されます。
・推奨しているか
「使ってみた」という感想と「これは人に勧めたい」という推奨は別のものです。過去の投稿に、他者へ勧める形の言い回しが自然に出てくるかどうかを見ます。
この4つを満たす人は、任命する前からエヴァンジェリストとして機能している可能性が高い層です。
フォロワー数を基準にしない
インフルエンサーのキャスティングでは、フォロワー数の大小よりも、直近90日の再生数をフォロワー数で割った視聴率や、直近90日のフォロワー成長率といった指標を見ます。数字の絶対値ではなく、いま反応が取れているかどうかを判断するためです。
アンバサダーの選定ではフォロワー規模の優先度はさらに下がります。フォロワーが1,000人程度でも、その層が自社商材のターゲットと重なっていれば、施策としては十分に機能します。ただし、発信がまったく届かない状態では成立しないため、投稿頻度と反応の有無だけは確認しておきます。
なお、上記の視聴率やフォロワー成長率は、インフルエンサー施策における起用判断のための基準です。アンバサダー選定にそのまま当てはめるものではない点は、社内で説明する際に区別しておくと混乱を避けられます。
公募型と指名型の使い分け
募集方法は大きく2つです。
公募型は、自社SNSやメールマガジンで広く募集をかける方法です。応募という行為そのものが意欲の証明になり、想定していなかった層のファンに出会える利点があります。一方で、応募数が読めず、選考の工数もかかります。
指名型は、条件に合う人に個別に打診する方法です。前述の4つの視点で候補を絞り込んでから声をかけられるため、質のコントロールがしやすくなります。人数は限られますが、初回はこちらから始めて、運用の型ができてから公募に広げる進め方が現実的です。
5. アンバサダープログラムの設計手順
STEP1 目的と役割を定義する
最初に決めるのは、何のためにやるのかです。ブランド認知の拡大なのか、UGCの創出なのか、商品改善のヒントを得ることなのか。目的によって、任命する人数も活動内容も変わります。
同時に、何を見て良し悪しを判断するかもここで決めておきます。アンバサダー施策には業界共通の評価基準があるわけではないため、目的から逆算して自社で設定する必要があります。UGCの創出が目的なら投稿数と内容の質、商品改善が目的なら得られた声の件数と反映件数、といった形です。「とりあえず投稿してもらう」で始めてしまうと、半年後に何を報告すればいいのかがわからなくなります。
STEP2 募集・任命の方法を決める
公募型か指名型かを決め、応募要件と選考基準を文章にします。任命の際は活動期間、期待する活動内容、提供するもの、辞退の方法までを書面で共有します。
見落とされやすいのが辞退の設計です。生活環境が変わって発信が難しくなる人は必ず出ます。抜けにくい仕組みにするとかえって関係が悪化するため、無理なく離れられる形にしておくほうが、結果的に長く続きます。
STEP3 アンバサダー側の価値を設計する
続けてもらうためには、アンバサダー側にも得るものが必要です。商品の提供だけでは、半年ほどで動機が弱くなります。
新商品を誰よりも先に試せる、開発担当者と直接話せる、自分の意見が商品に反映される、といった体験は、金銭報酬とは別の価値になります。相手が何を求めてこの活動をしているのかを把握し、そこに重なる価値を用意することが、プログラムの継続性を決めます。
STEP4 発信ガイドラインを整える
ガイドラインは、守ってほしい最低限と、自由にしてよい範囲を分けて示します。前者は広告であることの明示、事実と異なる表現の禁止、他社商品との直接比較の扱いなど。後者は投稿の形式、使用シーン、言葉づかいです。
禁止事項を細かく並べるほど、投稿は無難で似通ったものになり、アンバサダー施策の価値である生感が失われます。守るべき線を明確にしたうえで、それ以外は任せるという設計が結果的にうまくいきます。
STEP5 関係を継続させる仕組みをつくる
任命した後の運用が、この施策の実質です。新商品の情報を先に届ける、寄せられた意見に対して社内での検討結果を返す、公式アカウントで投稿を紹介する、といった往復を続けます。
加えて、アンバサダー同士がつながる場を用意すると熱量が維持されやすくなります。同じ商品を好きな人同士の会話は、企業からの発信よりも動機づけとして強く働くためです。
6. 「本音で推奨している」と伝わる施策のつくり方
インフルエンサーの役割は「推奨者」から「顧客の代弁者」へ
アンバサダーを任命し、投稿してもらうところまでは、多くの企業が到達します。しかし、それだけでは受け手に「本音で推奨している」とは伝わりません。良い評価が並んでいるだけの投稿は、報酬の有無にかかわらず広告として処理されるからです。
直近のインフルエンサー施策では、発信者の役割が従来の「推奨者」から「顧客の代弁者」へとシフトしつつあります。商品の宣伝やレビューをする存在ではなく、ユーザーを代表してメーカーへ声を届ける存在へ、という変化です。
この変化は、アンバサダー施策にとって重要な意味を持ちます。ブランドが求めるものが「良いと言ってもらうこと」から「顧客の声を預かってもらうこと」に変わるからです。
顧客への寄り添いとプロセスの共有
直近のインフルエンサー施策のキーワードとして挙げられるのが、「顧客への寄り添い(VOC)」と「顧客の信頼獲得(プロセスエコノミー)」の掛け合わせです。
受け手が「この人は本音で言っている」と感じるのは、評価の中身そのものではなく、その人が自分たちの側に立っているとわかった瞬間です。価格への不満を代わりに口にしてくれた、使いにくさをブランドに伝えてくれた、その結果が返ってきた。この一連の過程が見えることで、はじめて発信は信用されます。
効果が出ている2つの型
具体的な施策として成果が出ているのは次の2つの型です。
ひとつがキャンペーン連動型のVOC分析投稿です。発信者が視聴者から集めた声を分析し、それをもとにキャンペーンを設計して次の投稿につなげます。もうひとつがプロセスエコノミー型投稿で完成した商品を紹介するのではなく、検討や交渉の過程そのものをコンテンツにする形です。
いずれも投稿を単発の成果物ではなく、複数回にわたる物語の一部として扱う点が共通しています。
コメント欄の声を起点にキャンペーンを設計した例
私たちが支援した施策のなかから、この構造がわかりやすい例を紹介します。サロン専売だったヘアケア商品を、一般向けにも販売開始したケースです。
1投稿目:顧客の声を集める。
通常9,500円の商品を、8,500円のお試し価格で販売する内容の動画を公開し、見込み顧客のコメントを収集しました。結果として323件の販売につながり、楽天のリアルタイムランキングで1位を獲得しています。ここで終われば成功した施策ですが、コメント欄には「高い」「手が届かない」という声が数多く残っていました。

2投稿目:顧客の声を持ち帰り、企業を動かす。
この声を受けて発信者が商品の担当者に直接値下げを交渉する企画動画を制作しました。その結果、4,100円のお試しサイズを新たに用意したうえで、インフルエンサー経由の購入に20%OFFと300円クーポンを適用し、2,980円で購入できるオファーを設計しています。投稿から5日間でコンバージョンは1,000件を超え、楽天の急上昇ランキングとデイリーランキングで1位を獲得しました。

注目したいのは数字よりも構造です。1投稿目で拾った不満に対して、2投稿目では企業側が実際に動いて応えています。視聴者から見ると、この発信者は企業の代わりに売る人ではなく自分たちの声を届けてくれた人です。この立ち位置が「本音で推奨している」を成立させています。
アンバサダーであれば、もともと自費で購入し使い続けている愛用者なので、この構図はさらに自然に成り立ちます。「私も高いと思っていた」という言葉が、演出ではなく事実として発せられるためです。
発信を成果につなげる3つの条件
インフルエンサー施策では、投稿を成果につなげる条件として次の3つを整理しています。
・独自性と優位性
新しい「いい商品」の基準を作れるもの、あるいは既存の常識を変えられるものであること。発信者が語る理由がある状態をつくります。
・限定の最安値
その導線から購入するのが市場で最も安い状態にすること。最安値をチェックできるアプリの普及によって、視聴者は「そのリンクが本当に得か」を簡単に確認できるようになっています。アンバサダー経由の条件が他より不利だと、推奨そのものの説得力が損なわれます。
・限定の特典
その導線から購入した場合に、最も内容が充実していること。サンプルの同梱でも、別商品の現品でも構いません。
「本音で推奨している」と伝えるには、その推奨を裏づける中身が必要になります。誰に発信してもらうかを決めることと同じくらい何を用意して返すかが結果を左右します。
7. 運用時に押さえておきたい注意点
ステマ規制は「名称」ではなく「表示の主体」で判断される
2023年10月に施行されたステルスマーケティング規制において、判断の分かれ目になるのは、事業者の表示にあたるかどうかです。起用した相手をインフルエンサーと呼ぶか、アンバサダーと呼ぶか、エヴァンジェリストと呼ぶかは関係ありません。
事業者が投稿内容の決定に関与していると判断されれば、規制の対象になります。金銭の授受がなく、商品を提供しただけの場合でも該当しうる点には注意が必要です。アンバサダー施策は「自発的な発信」という建て付けになりやすい分、この線引きが曖昧になりがちです。
自社の運用が規制に抵触しないかどうかは、個別の事情によって判断が変わります。プログラムの設計段階で、必ず専門家や弁護士に確認するようにしてください。
短期施策との組み合わせで穴を埋める
前述のとおり、アンバサダー施策は立ち上がりに時間がかかり、リーチ量にも限りがあります。新商品の発売や繁忙期の需要獲得といった、期限のある目標をこれだけで達成するのは困難です。
現実的なのは、認知獲得はインフルエンサー施策や広告で担い、購入後の継続と推奨をアンバサダーで担うという役割分担です。どちらか一方に寄せるのではなく、ファネルのどこをどの施策で埋めるかという視点で全体を組み立てると、それぞれの施策に求める成果も明確になります。
8. まとめ
- アンバサダーマーケティングは、自社の愛用者を任命し、継続的な発信を通じてブランドの価値を伝える施策です。購入決定に最も影響する発信者として一般ユーザーが挙がるカテゴリーほど、効果が期待できます
- インフルエンサー・アンバサダー・エヴァンジェリストは、関係の起点と継続期間の2軸で整理できます。ファネル上の役割が異なるため、埋めたい穴に応じて使い分けます
- 候補者を見極める軸は、愛用・リピート・本音・推奨の4つです。フォロワー数の大小よりも、ターゲットとの重なりと発信内容の質を優先します
- 金銭報酬は抑えられる一方、運用にかかる担当者リソースは継続的に発生します。1年続けられる体制があるかを着手前に確認します
- 「本音で推奨している」と伝わるのは、顧客の声を預かった発信者に対して、ブランドが実際の施策で応えたときです。声を返す材料を用意しておくことが、施策全体の設計につながります
【執筆者プロフィール】
兼重 成美
株式会社エクスクリエ マーケティングGインフルエンサー会社でのキャスティング・ディレクション実務を経て、インフルエンサー施策をテーマにしたウェビナーの企画・運営に従事。現在はクロス・マーケティンググループにて、「エクスクリエ」「REECH」「トキオ・ゲッツ」の3社横断でマーケティングを担当。エクスクリエおよびREECHのオウンドメディア運営・コンテンツ制作を担い、REECHではSNS施策の実務情報を広告代理店・メーカーのマーケター向けに発信している。
インフルエンサーマーケティングならREECH DATABASE
REECHは国内70万件以上のインフルエンサーアカウントデータと3億件超の投稿データを保有するインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「REECH DATABASE」を運営しています。視聴率・フォロワー成長率・過去の人気クリエイティブ検索など30項目以上の分析指標をもとに、再現性の高いキャスティングと効果測定を実現します。
「効果測定を属人化させず、データ起点で判断できる体制をつくりたい」といったお悩みがありましたら、REECHまでお気軽にお問い合わせください。
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