UGCとは?クチコミが増え始める「最初の投稿」の設計
自社商品のUGCを増やしたい。そう考えて現状を確認したとき、投稿が想定より少ない、あるいは特定の商品だけ極端に出ていない、という状況に行き当たることがあります。
UGCは自然に発生します。ただし、発生する量は商材や状況によって大きく変わります。そして、投稿が少ない状態から増えていく過程には、時間のかかる段階があります。
この記事では、UGCが増え始める仕組みを整理したうえで、その立ち上がりを早めるための起点をどうつくるかを解説します。インフルエンサーの投稿を起点として設計する方法を中心に、ステマ規制の判断軸と、成果を社内に説明するための指標の置き方まで扱います。
この記事でわかること
✔UGCが増える条件
UGCの土台は体験の満足度にある。そのうえで投稿の型が揃うまでの立ち上がりが分かれ目になる。
✔起点をつくる3つの方法とIGCの設計
コンテンツ・人・仕組みの3つを比較し、立ち上げ期に最も速い人起点の設計を具体的に示す。
✔発生・波及・事業の3階層による効果測定
何を成果指標に置くべきかを実データから整理し、UGC施策の意味を社内に説明できるようになる。
1. UGCとは(ユーザー生成コンテンツ)
UGCは「User Generated Content」の略で、生活者自身が作成したコンテンツを指します。企業が制作したものではなく、商品やサービスに触れた人が自分の言葉や写真で発信したものが該当します。形式は問いません。テキストでも画像でも動画でも、作り手が生活者であればUGCです。
1-1. UGCの具体例
具体的には、次のようなものが含まれます。
- SNS投稿:Instagramのフィード・ストーリーズ、X、TikTokの動画など
- レビュー:ECサイトのカスタマーレビュー、店舗や施設のクチコミ
- 記事・動画:個人ブログ、YouTubeの使用レビュー
- その他:Q&Aサイトの回答、写真共有サービスへの投稿
このうち施策の対象として扱いやすいのは、投稿から商品が特定でき、他の人の目に触れる場所に残るものです。この記事でも、その範囲を前提に話を進めます。
1-2. CGMとの違い
CGM(Consumer Generated Media)と混同されやすいのですが、違いは一点です。UGCは「中身」、CGMは「場」を指します。食べログや@cosmeのように、生活者の投稿が集まることで成立しているメディアそのものがCGMであり、そこに書き込まれた1件ずつのレビューがUGCです。同じ投稿を、コンテンツとして見るか、それが集積する場として見るかの違いだと理解すれば実務上は足ります。
2. なぜ今、企業はUGCを増やしたいのか
「クチコミを増やしたい」という要望が現場に降りてくる背景には、購買の判断材料が変わってきたという事実があります。
2-1. 購入前の情報源が企業から生活者に移っている
エクスクリエの調査(2026年8月)によると、SNS・動画サービスの情報を参考に直近購入した商品について、購入決定に最も影響した発信者は、日用品・生活消耗品で「一般ユーザー」が34.7%と最多でした。食品・飲料・菓子(28.1%)、コスメ・スキンケア(25.2%)でも同様に一般ユーザーが最も高くなっています。
企業の公式アカウントやインフルエンサーではなく、名前も知らない一般ユーザーの投稿が、購入の決め手として最も多く挙がっている。これが日用品や食品といった、多くのメーカーが扱うカテゴリで起きています。
関連記事:【エクスクリエ調査レポート】SNS・動画サービスにおける購買行動に関する調査(2026年)
2-2. 広告だけでは判断されなくなっている
同じカテゴリの商品が並ぶ状況では、機能や価格の説明だけで選ばれることは多くありません。実際に使った人がどう感じたかという情報が、比較の段階で必要とされます。
企業が発信できるのは、あくまで企業の視点から見た情報です。使い始めて数週間経ったときの状態、想定していなかった使い方、期待とのずれ。こうした情報は、使った人からしか出てきません。広告予算を増やしても、この部分は埋まりません。
2-3. AI検索の参照元になる
生成AIやAI検索が回答を組み立てる際、レビューや個人の投稿が参照元として使われる場面が増えています。検索結果の表示形式が変わっても、生活者の投稿が判断材料として扱われる構造は変わりません。
3. UGCが増えるのはどんなときか
UGCは自然に発生します。ただし、どんな商品でも同じように出るわけではありません。
前提として最も大きいのは、語るに値する体験があるかどうかです。使ってよかった、思ったより便利だった、人に教えたくなった。こうした感情が動く体験がなければ、どんな仕掛けをしても投稿は増えません。コンプレックス系の商材やBtoB商材で投稿が集まりにくいのは満足度とは別に人に見える場で語りにくいという事情が働くためです。
そのうえで企業側が動かせる部分が2つあります。ひとつは投稿する理由をつくることです。同梱物やメルマガ、公式アカウントでの呼びかけ、キャンペーン。顧客接点で投稿を促す働きかけは、地道ですが確実に効きます。
もうひとつは投稿の仕方が分かる状態をつくることです。ここが立ち上がりの長さを左右します。商品について投稿しようと思ったとき、多くの人はまず商品名やハッシュタグで検索します。そこに投稿が並んでいれば、どう撮り、何を書けばいいかが伝わります。何もなければ、その人が最初の1人になります。自分の投稿がタグの1件目として残り、それが正解なのかどうかも分からない。この状態で投稿まで進む人は多くありません。
実際、企業が依頼して生まれた投稿が、依頼していない投稿を呼ぶケースがあります。八天堂は、モニターに指定のハッシュタグを付けて投稿してもらう取り組みを続けた結果、モニター以外の一般のファンも同じタグで投稿するようになったと報告しています。一方で、キリンのように、指定したハッシュタグで自然な投稿が生まれるまでに半年以上を要した例もあります。
参考記事:【事例で解説!効果的なUGCの増やし方】|SMMLab
立ち上がりには時間がかかります。だからこそ、最初の一定量を企業側で用意することに意味があります。次章から、その起点をどうつくるかを見ていきます。
なお、すでにUGCが十分に発生している商材の場合は、この後の4〜6章より8章の測定の話が役に立ちます。
4. UGCの起点をつくる3つの方法
立ち上がりの起点をつくる方法は、大きく3つに分かれます。何を起点にするかで整理します。
4-1. コンテンツで起点をつくる(PGC)
PGCは「Professional Generated Content」の略です。この語には二通りの使われ方があります。
一般的な用法では、企業やプロの制作者がつくったコンテンツ全般を指します。UGCの対義語としての用法で、テレビCMも公式サイトの記事も含まれます。
一方、SNSマーケティングの文脈では、より狭い意味で使われることがあります。SNS支援会社のホットリンクが提唱した用法で、UGCを発生させることを目的として企業が仕掛けるコンテンツを指します。制作主体ではなく目的で線を引く定義です。資料や記事でこの語に出会ったときは、どちらの意味かを確認してください。ここでは後者の意味で扱います。
参考記事:ソーシャルメディアマーケティングにおける「PGC」の必要性|株式会社ホットリンク
この方法が有効なのは、商品そのものが会話の対象になりにくい場合です。食洗機用の洗剤であれば、投稿されるのは「食洗機で家事がラクになった」という体験で、洗剤の銘柄は出てきません。この場合、洗剤の性能を訴求しても投稿は増えないため、家事の時短という文脈でコンテンツをつくり、その会話にブランドが乗る状態を目指します。
留意点は、コンテンツが話題になることと、ブランドが語られることが別だという点です。企画だけが広がって商品名が一緒に出てこない、という結果になりやすい方法でもあります。
4-2. 人で起点をつくる(IGC)
インフルエンサーに投稿を依頼し、その投稿を見本として一般ユーザーの投稿を生む方法です。IGCの詳細は5章以降で扱います。
4-3. 仕組みで起点をつくる
投稿までの動線を整備する方法です。
同梱物や購入完了メールへのハッシュタグと投稿例の掲載、公式アカウントでのユーザー投稿の再掲載、レビュー依頼のタイミング設計などが該当します。なかでも再掲載は、取り上げられること自体が投稿の理由になるため、動線と動機の両方に効きます。
コストが低く着手しやすい一方、立ち上がりの起点をつくる力は限定的です。投稿しようと思った人を最後まで運ぶ役割であり、投稿しようと思う人自体を増やす方法ではありません。
4-4. 立ち上げ期に人起点が最も速い理由
3つの方法を並べると、性質の違いが見えてきます。
|
コンテンツ起点(PGC) |
人起点(IGC) |
仕組み |
|
|
起点になるもの |
商品以外の文脈での会話 |
インフルエンサーの投稿 |
投稿までの動線 |
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効き始めるまで |
中〜長期 |
短期 |
短期 |
|
費用 |
制作費(中〜高) |
起用費(中) |
低 |
|
見本の供給 |
間接的 |
直接的 |
なし |
|
向いている状況 |
商品が会話に出てこない |
投稿が少ない立ち上げ期 |
一定量が既に出ている |
3章で述べたとおり、立ち上がりが長引く主な理由は、投稿の型が見えないことです。この点で、人起点の方法は他と性質が異なります。依頼した投稿がそのまま見本になるため、投稿の型を最も直接的に供給できます。
コンテンツ起点は会話の文脈をつくる方法なので、見本の供給は間接的です。仕組みは動線の整備であり、見本そのものは生みません。
したがって、投稿がほとんどない状態から立ち上げる場合、人起点から始めるのが最も速い選択になります。一定量が既に出ている場合は、仕組みの整備で取りこぼしを減らすほうが費用対効果は高くなります。
なお、従業員による発信をEGC(Employee Generated Content)と呼びます。店舗スタッフの発信が有効に働く業態もありますが、運用体制と社内ルールの整備が前提になるため、ここでは扱いません。
5. IGCとUGCは何が違うのか
人起点の方法を設計する前に、IGCの位置づけを整理しておきます。ここを取り違えると、施策の評価軸ごとずれます。
5-1. 違いは「企業の依頼と対価があるか」
IGCは「Influencer Generated Content」の略で、インフルエンサーが制作したコンテンツを指します。UGCとの違いは一点です。企業からの依頼と対価があるかどうか。
同じ人が同じ商品について投稿していても、自分で買って自発的に書いたものはUGC、依頼を受けて書いたものはIGCになります。フォロワー数や投稿の見た目ではなく、企業との関係で分かれます。
この線引きは用語の整理にとどまりません。依頼と対価がある投稿には広告であることの表示義務が生じるため、7章で扱う実務上の判断に直結します。
5-2. IGCはUGCではなく、UGCを生む起点
もうひとつ押さえておきたいのは、IGCそのものはUGCではないという点です。
インフルエンサーに100件投稿してもらっても、UGCが100件増えたことにはなりません。IGCの役割は、その投稿を見た一般ユーザーが自分でも投稿する状態をつくることにあります。成果物ではなく、起点です。
3章の整理に当てはめると、IGCは最初の一定量を企業が用意する役割です。それを見た一般ユーザーの投稿が続けば施策は成功で、続かなければ依頼した分の投稿が残っただけで終わります。
5-3. IGCの投稿数を成果にしてはいけない
この位置づけを踏まえると、評価の仕方も決まります。
IGCの投稿数やリーチを成果指標に置くと、施策は必ず「達成」します。依頼した本数は確実に投稿されるからです。しかし一般ユーザーの投稿が1件も増えていなくても達成に見えてしまいます。
見るべきは、IGCの実施前後で一般ユーザーの投稿がどう変化したかです。実施前の水準を記録しておかなければこの比較はできないため、施策の前に現在の投稿数を数えておく必要があります。
6. UGCを生むIGCをどう設計するか
ここからが実務です。誰に頼み、何を作ってもらい、どの規模で実施し、その後どう使うか。順に見ていきます。
6-1. 誰に頼むか
拡散を目的にするなら、フォロワー数の多い人を起用するのが合理的です。しかし、一般ユーザーの投稿の起点をつくることが目的の場合、判断軸は変わります。
見るべきは、その投稿を見た一般ユーザーが自分でも投稿しようと思うかどうかです。撮影機材やロケーションが本格的すぎる投稿は、感心はされても見本にはなりません。生活実感が離れている相手の投稿も同様です。
そのうえで、定量的な選定基準も必要になります。REECHでは、フォロワー数ではなく次の指標を軸に候補を絞り込んでいます。
視聴率(直近90日の再生数÷フォロワー数) フォロワー以外にどれだけ届いているかを示す指標です。REECHの分析では、販売効果に直結したインフルエンサーの8割以上で、IGリールの視聴率やTikTokの再生率が、EC向けで150%以上、店頭向けで270%以上という水準にありました。
フォロワー成長率(直近90日) 伸びている最中のアカウントは、フォロワーの関心が高い状態にあります。EC施策では、直近90日のフォロワー増加率が10%を超えるインフルエンサーは、他と比べてCTRが1〜2%、CVRが3〜5%高い傾向が見られました。
ただし、これらの基準はフォロワー規模によって変わります。50万人規模のアカウントに10万人未満と同じ視聴率を求めても現実的ではありません。

10万人未満であれば店頭施策で視聴率460%・フォロワー成長率10%が目安になる一方、50万人以上では視聴率100%・成長率1.5%が基準になります。規模ごとに水準を変えて評価する必要があります。
6-2. 何を作ってもらうか
見本として機能する投稿には、真似できる余地が必要です。
指示を細かく作り込むほど、投稿は企業の広告に近づきます。構図も文言も指定された投稿は、完成度は上がりますが、見た人が「自分にも書ける」とは思いません。逆に何も指定しなければ、商品名が入らない、伝えたい点が抜ける、といった問題が起きます。
実務上は、外せない要素だけを指定し、それ以外は任せるという形が現実的です。商品名の表記、必ず触れてほしい使用シーン、避けてほしい表現。この3点を押さえておけば、あとは各インフルエンサーの普段の投稿スタイルに寄せてもらうほうが、見本として機能します。
投稿の質をどう判断するか
実施後、その投稿が良かったかを判断する基準も決めておきます。REECHでは、インフルエンサー投稿の評価に保存率(保存数÷リーチ数)と視聴維持率(平均視聴時間÷動画尺)を使っています。保存率は0.5%以上、視聴維持率は30〜40%以上が目安です。
これはインフルエンサー投稿そのものの質を測る基準であり、UGCの評価指標ではありません。一般ユーザーの投稿を同じ基準で見ることはできないため、混同しないよう注意してください。UGC側の指標は8章で扱います。
6-3. いつ、どれくらいの規模で実施するか
立ち上がりを早めることが目的なので、投稿は一定期間に集中させます。
月に2件ずつ半年間続けるより、1か月に12件を集中的に出すほうが起点としては機能します。同じ時期に複数の投稿が並ぶことで、生活者から見て「この商品について話題になっている」という状態が生まれるためです。分散させると、それぞれが単発のPR投稿として消費されて終わります。
実施のタイミングは、商品が手に入る状態と合わせます。投稿を見て興味を持った人が店頭やECで買えなければ、そこで流れは止まります。メーカーの場合は配荷状況との調整が必要になるため、営業部門との連携が前提です。
6-4. 二次利用まで含めて設計する
依頼して制作された投稿は、契約の範囲内で他の用途にも使えます。
広告クリエイティブへの転用、ECの商品ページへの掲載、店頭POPへの使用、公式アカウントでの再投稿。企業が制作した素材より生活者目線に近いため、広告効率が改善するケースもあります。
重要なのは、この範囲を依頼時の契約で決めておくことです。投稿後に許諾を取り直すことも可能ですが、条件交渉が必要になり、費用も工数も増えます。使う可能性がある用途は、最初の契約に含めておきます。
一般ユーザーのUGCを二次利用する場合も同様に、投稿者への許諾取得が必要です。こちらは個別の連絡が発生するため、運用フローを先に決めておかないと現場が回りません。
7. 企業が関与したものはUGCと呼べるのか
用語の定義としては明快です。企業からの依頼と対価があるものはUGCではなく、IGCやPR投稿に分類されます。
ただし実務で問題になるのは呼び方ではありません。その投稿に、広告であることの表示義務が生じるかどうかです。社内でどう分類していても、表示義務の判断を誤れば景品表示法上の問題になります。
判断軸は「企業が表示内容の決定に関与しているか」
2023年10月に施行されたいわゆるステルスマーケティング規制では、事業者の広告であるにもかかわらず、消費者がそれを判別しにくい表示が規制の対象とされています。判断の軸になるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められるかという点です。
対価の有無だけで決まるわけではないため、ケースごとに整理しておく必要があります。
|
ケース |
企業の関与 |
表示義務の考え方 |
|
生活者が自費購入し自発的に投稿 |
なし |
対象外 |
|
企業が依頼し金銭を支払って投稿 |
あり |
広告である旨の表示が必要 |
|
商品を無償提供し、投稿内容も指定 |
あり |
広告である旨の表示が必要 |
|
商品を無償提供し、投稿内容は自由 |
個別に判断 |
関与の程度により判断が分かれる |
実務で迷うのは4つ目です。無償提供であっても、投稿を条件にしている、事前に内容を確認している、継続的に商品を提供している、といった事情があれば、関与があると評価される可能性があります。この領域は一律の線引きが難しく、施策ごとに個別の判断が必要です。実施前に法務部門や弁護士など専門家への確認を推奨します。
「UGCらしさ」は制作主体の話ではない
フォロワーをほとんど持たない生活者に、UGCに近いトーンのクリエイティブを制作してもらい、広告素材として使う手法も広がっています。生活者目線の映像や写真は、企業制作の素材より画面に馴染むためです。
この場合も、依頼と対価がある以上はUGCではありません。「UGCらしさ」はトーンや表現の話であって、誰が作ったかの話ではないと整理しておくと、社内の議論が混乱しません。素材として活用すること自体に問題はなく、必要なのは広告として扱い、必要な表示を行うことです。
8. UGCの成果をどう測り、社内にどう説明するか
小売経由で販売しているメーカーの場合、誰がどの投稿を見て店頭で購入したかを追うことはできません。ECのように投稿からの流入を計測できる構造にはなっていないためです。だからこそ、どの指標を成果として置くかの設計が重要になります。
8-1. 発生・波及・事業の3階層で捉える
指標は3つの階層に分けて設計します。
|
階層 |
指標 |
何を示すか |
|
発生 |
UGC件数、投稿者数、接触者数に対する発生率 |
投稿が生まれたか |
|
波及 |
語られる切り口の変化、保存・引用 |
会話が広がったか |
|
事業 |
店頭POSとの推移比較、店頭消化率、二次利用による広告効率 |
事業に効いたか |
発生の階層では、件数だけでなく比率も見ます。サンプリング数を増やせば投稿も増えるため、件数だけでは施策の質を判断できません。接触者数に対する比率を併せて見ることで、規模の影響を除いた評価ができます。
8-2. 指名検索は「橋」にならない場合がある
SNSマーケティングの領域では、UGCが増えれば指名検索が増え、それが売上につながるという説明が広く使われています。しかし、REECHが大手健康飲料系ブランドのID-POSデータと各種指標を突き合わせた分析では、この経路が必ずしも成立しないことが示されました。



確認されたのは次の3点です。
- imp数と店頭POS・指名検索は比例しにくい傾向
- UGC数と指名検索も一致しにくい傾向
- しかしUGC数と店頭POSは比例しやすい傾向
2点目はUGCの評価設計に直接影響します。同月比較では、UGCの増加が指名検索の増加に直結する傾向は限定的でした。指名検索はUGC以外の要因でも動くため、UGCの成果を指名検索で測ろうとすると、施策の効果が見えにくくなります。
1点目についても補足しておきます。impはあくまで露出量であり、指名検索に効くにはブランド名が記憶される、クリエイティブが強い、話題化やUGCが起きる、といった条件が必要です。imp単体では指名検索を作っていないと見たほうが安全です。
8-3. UGC数と店頭POSの関係をどう見るか
一方で、UGC数と店頭POSには一定の関係性が示唆されました。ただし、月次の伸び幅はそこまで大きくなく、売上はUGCより滑らかに動いています。
したがって、UGCが売上を直接押し上げたと断定することはできません。評価としては、想起形成・比較検討・購買の後押しに寄与したという捉え方が実態に近くなります。 単月の数字で因果を語るのではなく、複数月の推移を並べて傾向を確認する使い方が適切です。
なお、この分析は特定ブランドの事例であり、すべてのカテゴリに当てはまるわけではありません。自社で同様の確認を行う場合は、UGC件数と出荷・POSデータの推移を同じ期間で並べるところから始めます。
8-4. 社内報告への翻訳
測定の設計は、報告の相手を決めてから逆算します。
「クチコミが100件増えました」という報告は、聞いた側に判断材料を与えません。UGCの件数そのものに関心を持つのは、SNS施策の担当者だけです。
営業部門や経営層に向けては、事業の言葉に翻訳する必要があります。UGCが増えた時期と店頭消化率が動いた時期を並べる、二次利用によって広告のクリエイティブ制作費がどう変わったかを示す、配荷交渉で使える材料になったかを述べる。指標の設計と報告の設計は、同時に考えるものです。
9. まとめ|取り組む順番
最後に着手の順番を整理します。
- 現在のUGC件数を数える。表記ゆれを含めた検索条件を決め、施策前の基準値を記録します。この数字がないと、後で増減を判断できません
- 立ち上がりの段階を確認する。一定量が既に出ているなら仕組みの整備を、ほとんど出ていないなら起点づくりを優先します
- 起点の方法を選ぶ。立ち上げ期であれば人起点(IGC)が最も速く、商品そのものが会話に出てこない場合はコンテンツ起点(PGC)を検討します
- IGCを設計する。フォロワー数ではなく視聴率とフォロワー成長率で選び、投稿は一定期間に集中させ、二次利用の範囲を契約に含めます
- 指標を3階層で置く。UGCの成果を指名検索で測るのは避け、店頭POSとの推移比較を軸に、社内に説明できる形へ翻訳します
UGCの土台は商品体験そのものにありますが、立ち上がりの速さは企業の設計で変えられます。まずは現在地を数えるところから始めてください。
【執筆者プロフィール】
兼重 成美
株式会社エクスクリエ マーケティングGインフルエンサー会社でのキャスティング・ディレクション実務を経て、インフルエンサー施策をテーマにしたウェビナーの企画・運営に従事。現在はクロス・マーケティンググループにて、「エクスクリエ」「REECH」「トキオ・ゲッツ」の3社横断でマーケティングを担当。エクスクリエおよびREECHのオウンドメディア運営・コンテンツ制作を担い、REECHではSNS施策の実務情報を広告代理店・メーカーのマーケター向けに発信している。
インフルエンサーマーケティングならREECH DATABASE
REECHは国内70万件以上のインフルエンサーアカウントデータと3億件超の投稿データを保有するインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「REECH DATABASE」を運営しています。視聴率・フォロワー成長率・過去の人気クリエイティブ検索など30項目以上の分析指標をもとに、再現性の高いキャスティングと効果測定を実現します。
「フォロワー数以外の指標でインフルエンサーを選定したい」といったお悩みがありましたら、REECHまでお気軽にお問い合わせください。
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