この記事でわかること

✔SNSマーケティングの定義と「媒体選びの軸」
SNSマーケティングの定義・5つの手法・各媒体の役割を体系的に理解できる。

✔購買ファネルで見る各媒体の特性と調査データによる実態
各媒体が購買ファネルのどのフェーズで機能するかを調査データとともに把握できる。

✔今日から使えるKPI設計と施策の進め方
自社に合った媒体・手法の選び方から、imp数やENG率に頼らない 保存率・視聴維持率を軸にしたKPI設計とPDCAの回し方まで身につく。

1. SNSマーケティングとは何か?定義と基本概念

SNSマーケティングとは、Instagram・TikTok・YouTube・X(旧Twitter)などのソーシャルメディアを活用して、商品やサービスの認知度向上・購買促進・ブランド構築を図るマーケティング活動の総称です。

企業の公式アカウント運用、SNS広告の出稿、インフルエンサーとのタイアップ、キャンペーン施策など、多様な手法を包含します。デジタルマーケティング全体の中では「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」の3つすべてにまたがる領域に位置づけられます。

従来の広告手法との違い

テレビや新聞などのマス広告と比較したとき、SNSマーケティングには3つの大きな違いがあります。

1つ目は双方向性です。企業から消費者への一方通行ではなく、コメントや共有を通じて消費者との対話が生まれます。2つ目は拡散性です。ユーザーが気に入ったコンテンツを自発的にシェアすることで、広告費をかけずに認知が広がる可能性があります。3つ目はターゲティングの精度です。年齢・性別・興味関心に基づいた細かいセグメントへのリーチが可能で、費用対効果の高い施策設計ができます。

2. SNSマーケティングが注目される理由

国内SNS利用者の現状

総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、国内のSNS利用率は全年代平均で約80%を超え、20〜30代では90%以上に達しています。SNSはもはや若者だけのツールではなく、40代(91.8%)・50代(83.0%)でも高水準で普及しており、あらゆる世代の生活に浸透しています。

出典:総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」

なかでも利用率が最も高いのがYouTubeです。同調査では年代別利用率が10代で95.7%、20代で97.2%、30代で97.9%と、若年〜中堅層の実質全員が利用しています。エクスクリエが2026年2月に実施した「YouTubeにおける購買行動調査」(全国15〜69歳男女1,200人対象)でも、65.6%がYouTubeを利用しており、他のSNS・動画サービスと比較して性年代による差が小さく、あらゆるセグメントで6割を超えることが確認されています。

関連記事:【自主調査レポート】YouTubeにおける購買行動調査(2026年)

消費者の購買行動に与えるSNSの影響

単に「見ている」だけでなく、SNSは購買行動に直結しています。同調査では、43.3%の人がYouTubeをきっかけに商品を購入した経験ありと回答。女性15〜29歳では53.5%と過半数に達しています。


また、エクスクリエが2025年8月に実施した「SNSにおける購買行動〜Instagram編〜」(全国15〜69歳男女2,400人対象)によると、タイアップ投稿(PR投稿)を保存した後に実際に購入した経験のある人は55.2%。とくに男性では68.6%と高い購買転換率を示しています。


SNSは認知獲得の入り口であるとともに、比較検討・購買決定にも大きく関わる「購買ファネル全体」をカバーするメディアになっています。

関連記事:【自主調査レポート】SNSにおける購買行動に関する調査結果~Instagram編~

3. 代表的な5つの手法

① 公式アカウント運用

企業がSNSに公式アカウントを設け、商品情報・ブランドの世界観・お役立ち情報などを継続的に発信する手法です。コストを抑えながら長期的なファンを育てる基盤になります。一方で、効果が出るまでに時間がかかりやすく、コンテンツの継続的な制作体制が必要です。

② SNS広告

各SNSプラットフォームが提供する有料広告です。Meta広告(Instagram・Facebook)、TikTok広告、YouTube広告などがあります。ターゲティング精度が高く、短期間でのリーチ拡大に適しています。データに基づいたPDCAが回しやすいのも特徴です。

③ インフルエンサーマーケティング

フォロワー数・影響力を持つインフルエンサーに商品を紹介・レビューしてもらう手法です。インフルエンサーへの信頼感が購買意欲に直結するため、広告よりも自然なかたちで消費者に届きやすい点が強みです。

インフルエンサーの規模は一般的に以下のように分類されます。

分類

フォロワー数の目安

特徴

ナノ

〜1万人

エンゲージメント率が高く、特定コミュニティへの訴求力が強い

マイクロ

1万〜10万人

専門性・信頼感があり、費用対効果が高い

ミドル

10万〜100万人

リーチとエンゲージメントのバランスが良い

マクロ

100万人以上

大規模なリーチが可能。認知拡大向き

エクスクリエの調査(Instagram編)では、女性ユーザーが比較検討フェーズでフォロー外インフルエンサーの情報を参考にする傾向が示されています。「フォローしていない人」のリアルな口コミが購買の後押しになるという意味で、インフルエンサー施策は口コミ拡大の仕組みとして有効です。


④ ソーシャルリスニング

ソーシャルリスニングとは、SNS上に投稿されるユーザーの声・口コミ・トレンドをモニタリング・分析する手法です。自社商品や競合ブランドへの生の評判をリアルタイムで把握できるため、コンテンツ戦略の改善や新商品開発のヒント収集にも活用されます。

「消費者がどんな言葉で商品を語っているか」を把握することで、インフルエンサーへのブリーフィング内容や広告コピーの精度を高めることができます。SNSマーケティングを「発信するだけ」で終わらせず、市場の声を施策に反映するサイクルを作る上で重要な役割を担います。

⑤ キャンペーン・プレゼント施策

ハッシュタグキャンペーンやフォロー&リポスト施策などで、短期間のバズや認知拡大を狙う手法です。参加ハードルが低いため、フォロワー獲得や投稿数増加に向いています。ただし、エンゲージメントの質(本当に商品に関心のあるユーザーかどうか)には注意が必要です。

4. 主要4媒体の特性と選び方

Instagram:ビジュアルと口コミが強い購買直結型SNS

国内のInstagramユーザーは若年〜中堅層の女性を中心に幅広く普及しています。食品・飲料・美容・ライフスタイルなど、ビジュアルで魅力を伝えやすいFMCG(日用消費財)カテゴリとの親和性が高いのが特徴です。

エクスクリエの調査(Instagram編、2025年8月)では、女性の購買プロセスにおいてインフルエンサーの影響が全フェーズで確認されています。商品認知ではフォロー内外のインフルエンサーを参考にし、比較検討フェーズではフォロー外のインフルエンサーの情報も積極的に活用しています。ストーリーズやリール、ハッシュタグ検索など、多彩な機能を組み合わせた設計が重要です。

また、男性は女性と比較してInstagram広告への反応率が10.4ポイント高いというデータもあり、男女でアプローチを変えることが有効です。


TikTok:認知拡大に強い「発見」の場

エクスクリエの調査(TikTok編、2025年9月)によると、TikTokは購買プロセスの中でも特に「商品認知(発見)フェーズ」での利用が突出しており、情報収集・比較検討フェーズに進むにつれて利用率が低下する傾向があります。つまり、TikTokは「知ってもらう」ための媒体として最も威力を発揮します。

10代のTikTok活用が際立つ一方、女性は「おすすめ」タブを中心とした受動的な情報取得を通じて商品を発見するケースが多く、アルゴリズムに乗るコンテンツの質がカギを握ります。フォロー外のインフルエンサー情報も参考にする女性が多いため、新規リーチとの相性が良い媒体です。


関連記事:【自主調査レポート】SNSにおける購買行動に関する調査結果~TikTok編~

 

YouTube:詳細な情報伝達と購買転換に強い

エクスクリエの調査(YouTube編、2026年2月)では、購入を決める際に参考になるYouTube動画として「実際の使用感がリアルにわかる動画」が21.4%で最多、次いで「メリット・デメリットを紹介する動画」が続きます。家電・ガジェットは比較・スペック確認、コスメ・美容は使い方・アレンジ方法の把握に活用されています。

タイアップ動画(PR動画)をきっかけに商品を購入した経験がある人は31.5%、そのうちリピート購入経験者は36.8%というデータも注目です。認知から購買、さらにリピートまで繋げるポテンシャルを持つ媒体です。また、PR表記に対して「特に気にせず視聴する」と回答した人が34.5%おり、若年層では「安心する」「好感を持つ」割合が高いことも特徴的です。


X(旧Twitter):拡散力と情報感度の高い層へのリーチ

国内月間アクティブユーザーは6,700万人(2023年時点)と、日本でのシェアが特に大きいSNSです。テキスト中心のリアルタイム情報発信と高い拡散力が特徴で、情報感度の高いユーザーへのリーチに強みがあります。トレンドに乗ったキャンペーンや、新商品ローンチ時の話題づくりに効果的な媒体です。

5. 成果につなげるSNS施策の実践ポイント

購買ファネルに沿った媒体・コンテンツ設計

消費者は、「知る→調べる→比較する→買う」という購買プロセスを経ます。エクスクリエの調査が示すように、各フェーズで活用される媒体やコンテンツは異なります。

  • 認知(知る):TikTok・Instagramのリール・YouTubeショートでバズを狙う
  • 情報収集(調べる):Instagram投稿・ハッシュタグ検索・YouTubeの詳細レビュー
  • 比較検討(決める):フォロー外インフルエンサーの口コミ・タイアップ動画
  • 購買(買う):Instagramのショッピング機能・EC連携・店頭サンプリング

新商品ローンチ時はTikTok・Instagramで認知を取り、YouTubeで詳細な使い方やレビューを届け、購買直前の背中を押すコンテンツへとつなぐ設計が有効です。

インフルエンサー施策×店頭・ECのシナジー

SNS上でのインフルエンサー投稿をきっかけに、ECサイトや店頭での購買につなげる設計が重要です。UGCを公式ECページに活用したり、インフルエンサーの投稿に購入リンクを組み込んだりすることで、SNSと購買の接点を短縮できます。

また、インフルエンサー施策とサンプリングを組み合わせることで、体験→口コミ→購買という自然な流れを設計することも可能です。

ステルスマーケティング規制への対応

2023年10月に施行されたステルスマーケティング(ステマ)規制により、企業が費用・商品提供などを行ったPR投稿には「#PR」「#広告」などの明示が義務付けられています。対応を怠った場合、ブランドへの信頼棄損につながるリスクがあります。具体的な対応については、必ず弁護士や専門家に相談のうえ確認してください。

なお、エクスクリエの調査(YouTube編、2026年2月)では、PR表記を見た際に「安心する」「好感を持つ」と回答した若年層も一定数存在しており、適切な表記はブランド信頼の向上にもつながりえます。


6. 効果測定のKPI設定

SNSマーケティングの効果を正しく評価するには、目的に応じたKPI(重要業績評価指標)の設定が必要です。

目的

主なKPI

認知拡大

リーチ数、インプレッション数(imp)、フォロワー増加数

コンテンツ品質評価

保存率(保存数÷リーチ数)、視聴維持率(平均視聴時間÷動画尺)

口コミ・トレンド把握

SNS言及数、UGC数、センチメント分析、指名検索数

購買・転換

店頭POS変化、ECモール流入・CVR、クリック率(CTR)

ブランドリフト

ブランド認知率、購買意向スコア(サーベイ調査)

インフルエンサー施策における「指標の読み方」

インフルエンサーマーケティングでは、これまで「リーチ数・imp数」や「ENG率(エンゲージメント率)」を主要指標として扱うケースが多くありました。しかし、REECHが蓄積してきた実績データから見えてきたのは、imp数の多さが必ずしも売上や指名検索の増加に比例するわけではないという事実です。

impはあくまで「露出機会を創出した」ことを示す中間指標にすぎません。それが実際の購買や検索行動につながったかどうかは、別の指標で判断する必要があります。


インフルエンサーのキャスティング(選定)軸:

  • 視聴率(再生数÷フォロワー数):当社のデータによると、販売効果に直結した施策の大半では、IGリールの視聴率はEC向けで150%以上、店頭向けで270%以上が確認されています
  • フォロワー成長率(直近90日):10%以上のアカウントはCTR・CVRが平均より1〜5%高い傾向
  • ENG率:選定の参考指標の一つとして活用しますが、それ単独での判断は推奨しません

投稿の品質評価(施策実施後)で最重要な指標:

  • 保存率(保存数÷リーチ数):「後で見返したい」と思わせた投稿かどうかを示す指標。0.5%以上が高品質の目安
  • 視聴維持率(平均視聴時間÷動画尺):動画がどれだけ最後まで見られたかを測る指標。30〜40%以上が目標水準


再生数やimpだけでは「見られた量」しかわかりません。コンテンツが本当にユーザーの心に刺さったかを判断するには、保存率と視聴維持率を軸に置いた評価が重要です。

7. 失敗しないための進め方ステップ

ステップ1:目標とKPIを明確にする

「とりあえずSNSをやってみる」では成果が出にくく、社内稟議も通りません。まず「何のためにやるか(認知?購買?ブランドリフト?)」を定め、それに対応するKPIを数値で設定します。

ステップ2:ターゲットと媒体を絞る

自社のターゲット層(年齢・性別・ライフスタイル)と各SNSのユーザー特性を照合し、まずは1〜2媒体に集中することをお勧めします。すべての媒体に同時に取り組むとリソースが分散し、どれも中途半端になりやすい傾向があります。

ステップ3:コンテンツを設計し、継続投稿する

SNSは継続が肝心です。週次の投稿スケジュールを設け、ビジュアル・コピー・ハッシュタグの一貫性を保ちながら発信します。インフルエンサーを起用する場合も、単発ではなく複数回投稿の設計が効果を高める傾向があります。

ステップ4:データを分析し、改善する

各SNSのインサイト機能や分析ツールを用いて、KPIの達成状況を定期的に確認します。エンゲージメント率が高い投稿の傾向を分析し、コンテンツ内容・投稿時間・起用インフルエンサーの選定などを継続的に改善していくことが成果を積み上げるポイントです。

まとめ

この記事で解説したポイントを以下に整理します。

  • SNSマーケティングとは、Instagram・TikTok・YouTube・Xなどを活用して認知・購買・ブランド構築を図る施策の総称。公式運用・広告・インフルエンサー・ソーシャルリスニング・キャンペーンの5手法がある。
  • 国内SNSの利用実態は全年代で高水準。YouTubeをきっかけに商品購入した経験者は43.3%、Instagramのタイアップ投稿保存後の購買経験者は55.2%と、SNSは購買行動に直結している。
  • 媒体の使い分けが重要。TikTokは認知、Instagramは情報収集〜比較検討〜購買、YouTubeは詳細レビューと購買転換、Xは拡散と話題づくり。
  • 購買ファネルに沿って媒体・コンテンツ・インフルエンサーを組み合わせることが成果の鍵。ステマ規制への対応も必須。
  • KPI設定と継続的なPDCAなしには効果検証ができず、社内での投資対効果の説明も困難になる。

 

 

【執筆者プロフィール】
兼重 成美
株式会社エクスクリエ マーケティングG

インフルエンサー会社でのキャスティング・ディレクション実務を経て、インフルエンサー施策をテーマにしたウェビナーの企画・運営に従事。現在はクロス・マーケティンググループにて、「エクスクリエ」「REECH」「トキオ・ゲッツ」の3社横断でマーケティングを担当。エクスクリエおよびREECHのオウンドメディア運営・コンテンツ制作を担い、REECHではSNS施策の実務情報を広告代理店・メーカーのマーケター向けに発信している。

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