SNSキャンペーンとは?種類・目的別の選び方を解説
「SNSキャンペーンをやることになったが、どの手法を選べばいいのかわからない」——SNS施策の担当者から、こうした声をよく聞きますが無理もありません。
フォロー&リポスト、インスタントウィン、ハッシュタグ投稿、レシート応募、マイレージ型マストバイ。SNSキャンペーンと一口に言っても手法は多岐にわたり、それぞれ得意なことがまったく違います。にもかかわらず、多くの解説記事は手法を横並びに紹介するだけで、「自社の場合はどれを選ぶべきか」という肝心の判断基準までは踏み込んでいません。
結果として起こりがちなのが、「とりあえずフォロー&リポストで応募を集めたが、フォロワーは増えたものの売上には何もつながらなかった」というケースです。これは手法が悪かったのではなく、目的と手法が噛み合っていなかっただけの話です。
本記事では、SNSキャンペーンの基本的な仕組みから、オープンキャンペーンとクローズドキャンペーンという2つの分類、そして「認知拡大・フォロワー獲得・トライアル促進・リピート促進・ファン育成」という5つの目的軸ごとに、どの型が何に効くのかを整理します。あわせて、応募数だけに頼らない成果測定の考え方と、景品表示法・ステマ規制といった実施前に押さえておくべき法規制も解説します。
読み終える頃には、自社の課題に対してどのキャンペーンを選ぶべきかの判断軸が手に入っているはずです。
この記事でわかること
✔SNSキャンペーンの全体像と種類の整理
SNSキャンペーンは手法が多く、どれを選ぶべきか判断しづらい。まず全体像を俯瞰することが設計の出発点となる。
✔目的別・オープン/クローズド別の型の選び分け
認知拡大・フォロワー獲得・トライアル促進・リピート促進・ファン育成という5つの目的軸から、どの型が何に効くのかをデータとともに整理する。
✔成果測定と法規制対応の実践ポイント
応募数だけに頼らない評価軸と、景品表示法・ステマ規制の基本的な確認手順が身につく。
1. SNSキャンペーンとは
SNSキャンペーンの基本的な仕組み
SNSキャンペーンとは、X(旧Twitter)・Instagram・TikTok・LINEといったSNS上で実施する、ユーザー参加型の販促施策の総称です。企業アカウントのフォローや投稿の拡散、ハッシュタグを付けた投稿、購入レシートの投稿などを応募条件とし、参加者の中から抽選で景品を提供する形が一般的です。
仕組み自体はシンプルですが、SNSキャンペーンが他の販促手法と決定的に異なるのは、「応募という行為そのものが、他のユーザーへの露出になる」という点です。リポストすれば参加者のフォロワーのタイムラインに表示され、ハッシュタグを付けて投稿すればその投稿が新たな接点になります。参加者が増えるほど二次拡散・三次拡散が起こり、広告費をかけずに露出を広げられる構造になっています。
近年は、応募と同時に当落がわかるインスタントウィン、購入を条件とするレシート投稿型、複数回購入でポイントが貯まるマイレージ型など、目的に応じた手法が細分化してきました。単なる景品配布にとどまらず、フォロワー獲得からUGC収集、店頭送客、リピート促進まで、幅広い成果を狙える施策へと進化しています。
なぜ今あらためて注目されているのか
SNSキャンペーンは決して新しい手法ではありません。それでも今あらためて注目されている背景には、企業が抱えている課題の変化があります。
ひとつは、SNSの認知施策が「やって終わり」になりやすいという反省です。インプレッション数を追う運用が定着した一方で、その数字が事業成果にどうつながったのかを説明できないという悩みが広がっています。この点については後述しますが、露出量と売上・指名検索のあいだには、実は思われているほど素直な関係がありません。
もうひとつは、購買データと接続できる手法への関心の高まりです。レシート投稿型やマイレージ型といった、購入を条件にするキャンペーンは、SNS上の反応と実際の購買行動を紐づけて評価できます。「SNS施策の成果を上司やクライアントに説明したい」という担当者にとって、この可視化のしやすさは大きな価値を持ちます。
つまりSNSキャンペーンは、「拡散のための施策」から「成果を証明できる施策」へと、期待される役割が変わりつつあるのです。
2. SNSキャンペーンの2大分類|オープンキャンペーンとクローズドキャンペーン
手法ごとの違いを見ていく前にまず押さえておきたい分類軸があります。それが「オープンキャンペーン」と「クローズドキャンペーン」です。この2つは、参加ハードル・取得できるデータ・景品の上限額という3点で大きく異なり、企画の初期段階で決めるべき最も重要な分岐点になります。
オープンキャンペーン:応募条件に購入を含まない
オープンキャンペーンとは、商品の購入や来店を応募条件としない形式のことです。景品表示法の文脈では「オープン懸賞」とも呼ばれます。SNSキャンペーンでいえば、「公式アカウントをフォローしてリポストするだけ」「指定のハッシュタグを付けて投稿するだけ」といった形式が該当します。
最大の利点は参加ハードルの低さです。ユーザーは数タップで応募を完了できるため、短期間で多くの参加者を集めやすくなります。まだ商品を知らない層にも門戸が開かれているため、認知拡大やフォロワー獲得を狙う場面で力を発揮します。
一方で、購入を伴わないぶん、応募者が実際の購買層かどうかは判断できません。景品目当てで参加しただけのユーザーが一定数含まれることは、あらかじめ織り込んでおく必要があります。
クローズドキャンペーン:購入・来店を条件にする
クローズドキャンペーンは、商品の購入やサービスの利用を応募条件とする形式です。こちらは法律上「クローズド懸賞」と呼ばれ、後述する景品規制の対象になります。レシートを撮影して投稿する形式や、商品パッケージのシリアルコードを入力する形式が代表的です。
購入という行動を挟むぶん参加ハードルは上がりますが、その代わりに得られるものが大きく変わります。応募者は確実に購入者であり、レシートからは購入店舗・購入日・併売商品といった情報も取得できます。「SNS施策が実売にどうつながったか」を説明したい場合、この形式が最も直接的です。
また、複数回の購入を条件にするマイレージ型にすれば、単発の購入で終わらせず継続購買を促す設計も可能になります。
どちらを選ぶかで変わるもの
両者の違いで実務上とくに注意が必要なのが、景品の上限額です。
景品表示法では、取引に付随して提供する景品類に上限額が定められています。購入を条件としないオープンキャンペーンについては、景品類の上限額に関する規制が撤廃されています。一方、商品購入を条件とする一般懸賞や、購入者全員に提供する総付景品には、取引価額に応じた上限額が設けられています。
つまり「豪華な景品で話題化したい」という発想でクローズドキャンペーンを設計すると、上限額に抵触する可能性があります。景品の内容を決める前に、どちらの形式を採るのかを固めておくことが実務上の鉄則です。上限額の具体的な計算については後述しますが、判断に迷う場合は必ず社内法務や専門家に確認してください。
出典:景品規制の概要|消費者庁
3. 目的別に見るSNSキャンペーンの選び方
ここからが本記事の中心です。SNSキャンペーンで成果が出ないケースの多くは、手法の選択そのものではなく、目的と手法が噛み合っていないことに原因があります。
目的を1つに絞ることがなぜ重要か
「認知も広げたいし、フォロワーも増やしたいし、売上にもつなげたい」——企画の初期段階でこう考えるのは自然なことです。しかし目的を複数抱えたまま設計に入るとほぼ確実に企画がぼやけます。
理由は単純で目的によって最適な応募条件が正反対になるからです。認知拡大を狙うなら応募ハードルは限りなく低くすべきですが、購買促進を狙うならレシート投稿という高いハードルを設けなければなりません。両方を同時に満たす設計は存在しません。
さらに厄介なのは、目的が曖昧なまま実施すると終了後の評価もできなくなることです。応募数が3万件集まったとして、それが成功なのか失敗なのかは、何を狙っていたかによって判断が変わります。認知拡大が目的なら成功でしょうし、購買促進が目的だったなら、応募数はほとんど意味を持ちません。
だからこそ、まず目的を1つに絞る。以下では5つの目的軸それぞれについて、対応する型と設計上の注意点を見ていきます。

① 認知拡大|フォロー&リポスト、インスタントウィン
新商品の発売時など、「まず知ってもらう」ことが最優先の局面で選ぶ型です。
フォロー&リポストは、公式アカウントのフォローと対象投稿のリポストで応募が完了する形式で、Xで最も広く使われています。リポストされた投稿が参加者のフォロワーに表示されるため、応募が増えるほど露出が面的に広がる構造になっています。
インスタントウィンは、応募直後にその場で当落がわかる形式です。厳密には応募条件ではなく抽選方式の話ですが、「結果がすぐわかる」という体験そのものが参加意欲を高め、リピート参加も促せます。短期間で参加者数を最大化したい場面に向いています。
設計上のポイントは、初速の確保です。SNSのアルゴリズムは初期の反応量に強く影響されるため、開始直後の露出が伸びるかどうかがその後の広がりを大きく左右します。SNS広告での告知や、メルマガ・店頭POPといった他チャネルとの併用を、事前に計画しておくことをおすすめします。
② フォロワー獲得|接点を資産化する
認知拡大と重なる部分はありますが、狙いが異なります。認知拡大が「一度知ってもらう」ことなら、フォロワー獲得は「今後も届けられる状態をつくる」ことです。
キャンペーン終了後も情報を届けられる母数が残るという意味で、獲得したフォロワーは自社の資産になります。フォロー&リポストのほか、LINE公式アカウントの友だち追加を条件にする形式も、この目的では有力な選択肢です。
ただしここで注意したいのが、景品の選び方です。誰でも欲しくなるような高額景品を用意すれば応募数は伸びますが、集まるのは景品目当てのユーザーが中心になり、キャンペーン終了後に一斉に離脱していきます。「誰でも欲しい景品」ではなく「その商品のファンが欲しい景品」を選ぶほうが、結果として質の高いフォロワーが残ります。
評価する際も、獲得したフォロワー数だけでなく、終了から数ヶ月後にどれだけ残っているかまで確認すると実態がつかめます。
③ トライアル・購買促進|レシート投稿、マストバイ
「認知は取れているが、購買につながらない」という課題に対応する型です。
レシート投稿キャンペーンは、対象商品を購入したレシートを撮影・投稿してもらう形式です。購入という行動を応募条件にすることで、SNS施策を確実に実売に接続できます。メーカーや流通のプロモーションで広く活用されており、店頭での購買行動を可視化できる点が最大の価値です。
この型が特に効果を発揮するのは、店頭とSNSを連動させる場面です。店頭POPでキャンペーンを告知し、購入後にSNS経由で応募してもらうという導線を組めば、オンラインとオフラインをまたいだ効果測定が可能になります。
設計上の注意点は、応募のハードルとリターンのバランスです。レシートを撮影して応募フォームに入力するという手間に見合うだけの当選確率や景品価値がなければ、購入者は応募してくれません。当選人数を多めに設定する、その場で結果がわかる形式にするなど、参加体験を軽くする工夫が有効です。
④ リピート促進|マイレージ型で「買い続ける理由」をつくる
初回購入を促す③に対し、2回目以降の購買を狙うのがこの型です。
マイレージ型マストバイキャンペーンは、購入するほどポイントが貯まり、応募口数や当選確率が上がる形式です。「1回買えば終わり」ではなく「買うほど有利になる」設計にすることで、キャンペーン期間中の継続購買を促せます。日用品や食品・飲料など、購入頻度の高いカテゴリと特に相性がよい型です。
LINE公式アカウントと組み合わせれば、友だち追加してもらったうえでポイント状況を通知したり、あと1点で応募口数が増えることを知らせたりといった、能動的なリピート喚起も可能になります。
評価する際は、応募総数ではなく「1人あたりの応募回数」や「複数回応募した人の比率」を見てください。応募数が多くても、全員が1回ずつ応募しただけならリピート促進としては機能していないことになります。
⑤ UGC獲得・ファン育成|ハッシュタグ投稿、フォトコンテスト
即効性よりも中長期的な資産づくりを狙う型です。
ハッシュタグ投稿キャンペーンやフォトコンテストでは、ユーザー自身が商品に関する投稿を発信してくれます。集まった投稿は第三者のリアルな声として信頼されやすく、広告クリエイティブやECサイト、店頭POPへの二次活用も可能です。キャンペーンが終わった後も残り続けるという意味で、これらは明確に「資産」と呼べます。
アンバサダー型はさらに一歩進んで、一定期間にわたって商品を発信してもらう形式です。参加ハードルは高いものの、ブランドと親和性の高いユーザーを可視化でき、熱量の高い発信が継続的に生まれます。
この型を選ぶ際に理解しておきたいのが、UGCと成果の関係です。後述しますが、UGCの数と指名検索数のあいだには明確な因果関係が見出しにくい一方、店頭POSとは一定の関係性が示唆されるという傾向があります。つまりUGCは「検索を増やすため」ではなく、「想起形成・比較検討・購買の後押し」という観点で評価するのが妥当です。
目的が複数ある場合の優先順位のつけ方
とはいえ実務では「認知も購買も」と求められる場面があります。その場合の考え方を2つ紹介します。
ひとつは、時間軸で分ける方法です。第1弾でオープンキャンペーンによる認知拡大とフォロワー獲得を行い、第2弾で獲得したフォロワーに向けてレシート投稿型を実施する。1つのキャンペーンに詰め込むのではなく、段階的に設計します。
もうひとつは、主目的と副次目的を明確に分ける方法です。主目的はあくまで1つに定め、KPIもそこに置く。副次的に得られるもの(認知拡大を狙った結果としてのフォロワー増など)は、評価はするが判断基準にはしない。この整理をしておくだけで、施策後の振り返りが格段にしやすくなります。
4. 媒体ごとの相性とファネル上の役割
同じキャンペーンでも実施する媒体によって届く層も得意な役割も変わります。媒体選定は「利用者数が多いから」ではなく、ファネル上のどの段階を担わせたいかで判断すべきです。
X|拡散とローンチ初動
リポストによる拡散力とリアルタイム性が最大の武器です。フォロー&リポストやインスタントウィンとの相性が非常によく、短期間での認知拡大に向いています。新商品のローンチ時など、初動で一気に話題をつくりたい場面での第一候補になります。
ただし、Xはキャンペーン実施に関する公式ガイドラインが比較的細かく定められています。複数アカウントでの応募を推奨しない、同一内容の反復投稿を促さないといった条件があるため、応募規約の作成時には必ず最新のガイドラインを確認してください。
Instagram|保存され、比較検討に残る
写真や動画によるビジュアル訴求に強く、ハッシュタグ投稿やフォトコンテストでの質の高いUGC収集に向いています。
Instagramの特性として注目したいのが「保存」という行動です。エクスクリエの調査(2025年8月)によると、保存したタイアップ投稿の商品を実際に購入した経験がある人は55.2%と半数を超えており、特に男性では68.6%にのぼりました。また保存の理由としては、商品やサービスの詳細確認や購入検討が中心で、男性では日常生活に役立つ情報やキャンペーン・割引情報を重視する傾向が見られています。
つまりInstagramは、その場の反応だけでなく、保存されて後から見返されるという時間差の接点を持つ媒体です。キャンペーンを設計する際も、応募締切までの短期決戦として組むか、保存されて検討期間に効くことまで見込んで組むかで、投稿内容の作り方は変わってきます。
出典:SNSにおける購買行動に関する調査結果~Instagram編~|株式会社エクスクリエ
TikTok|認知フェーズの到達力
おすすめタブ経由でフォロワー以外にも届くため、若年層への到達力に優れています。ハッシュタグチャレンジのような参加型企画で自然拡散を狙える点も特徴です。
一方で、TikTokは認知フェーズでの利用が中心であり、情報収集や比較検討のフェーズに移ると利用率が下がる傾向があります。「まず知ってもらう」段階では有力ですが、購買直前の後押しまでを一媒体で完結させようとすると期待とずれる可能性があります。
LINE|クローズドな囲い込みとリピート
友だち追加後は1対1で直接メッセージを届けられるため、既存顧客の育成やリピート促進に適しています。マイレージ型キャンペーンのポイント状況通知や、クーポン配布といった継続的なアプローチの基盤として機能します。
なお、LINEはサービスごとにガイドラインが分かれています。LINE公式アカウントの利用規約と、応募機能に関するガイドラインは別物なので、混同せずに確認してください。
関連記事:SNSのおすすめは?媒体別の特性と選び方
5. SNSキャンペーンの進め方6ステップ
目的と媒体が定まったら、実行フェーズに入ります。ここでは企画から振り返りまでを6つのステップで整理します。
STEP1 目的とKPIを1つに絞る
前述のとおり、まず目的を1つに定めます。そのうえで、目的に対応するKPIを設定してください。この段階で、計測方法・集計期間・比較対象まで決めておくことが重要です。
後からKPIを変えられる状態にしておくと、結果が出た後に都合のよい指標を選んでしまい、振り返りが機能しなくなります。
STEP2 型と景品を決める
目的に合ったキャンペーンの型を選び、景品を設計します。景品はターゲット層とブランドテーマに合致させることが原則です。
同時に、この段階でオープンキャンペーンかクローズドキャンペーンかを確定させ、景品表示法上の上限額を確認してください。景品を決めてから法規制に気づくと、企画の作り直しになります。
STEP3 応募条件・期間・当選人数を設計する
参加ハードルと成果のバランスを取りながら、応募条件を決めます。応募ステップが1つ増えるごとに離脱は発生するため、目的に照らして本当に必要な条件だけに絞ってください。
当選人数の見せ方も参加率に影響します。「1名様に豪華賞品」よりも「1,000名様に手頃な賞品」のほうが、当選期待値が伝わりやすく参加を促せる場合があります。
STEP4 クリエイティブと告知導線を用意する
投稿クリエイティブは、一目で「何がもらえるか」「どうすれば参加できるか」が伝わることが最優先です。ブランドのトンマナを保ちつつ、視認性を犠牲にしないバランスを取ります。
告知はSNS投稿だけに頼らず、自社サイト・メルマガ・LINE・店頭など、使える接点に分散させます。開始日と追加告知日を運用表に落とし込んでおくと、初速の設計が具体化します。
STEP5 運用・事務局対応を回す
期間中は応募者の管理、応募条件を満たしているかの確認、問い合わせ対応、抽選、当選連絡、景品発送といった実務が発生します。手作業では想像以上の工数がかかるため、ツールや事務局代行の活用が現実的です。
あわせて、個人情報の取得項目・閲覧権限・保管期限・削除手順を、運用開始前に決めておいてください。
STEP6 効果検証し、次の設計に返す
終了後は、STEP1で設定したKPIに対して結果を振り返ります。ここで重要なのは数字を並べるだけで終わらせず、「なぜその結果になったのか」まで言語化することです。
媒体・参加形式・告知経路それぞれに分けて記録しておくと、次回の企画で再現できる要素と改善すべき要素が見えてきます。
6. 成果をどう測るか|応募数だけで判断しない評価軸
キャンペーンの評価で最も陥りやすいのが、応募数やインプレッション数といった目に見えやすい数字だけで判断してしまうことです。
目的別に見るべきKPI
まず前提としてKPIは目的と一対一で対応させます。認知拡大ならリーチ数と拡散数、フォロワー獲得なら新規フォロワー数と獲得単価、トライアル促進ならレシート応募数と新規購入者比率、リピート促進なら複数回応募率と再購入率、ファン育成ならUGC投稿数と投稿内容の傾向、といった具合です。
複数の指標を混ぜて一つの数字にまとめてしまうと、何が効いたのかが判断できなくなります。目的ごとに指標を分けて記録することが、次につながる振り返りの前提条件です。
応募数・imp数だけでは判断できない理由
ここで押さえておきたいのが、露出量と事業成果の関係です。
当社が大手健康飲料ブランドのID-POSデータと連携して行った分析では、興味深い傾向が確認されています。インプレッション数と店頭POS・指名検索数のあいだには比例関係が見出しにくく、UGC数と指名検索数のあいだにも一致しにくい傾向がありました。一方で、UGC数と店頭POSのあいだには比例しやすい傾向が確認されています。



この結果が示しているのは、インプレッションはあくまで認知機会の創出を示す中間指標であり、実売や検索行動を直接説明する指標とは言い切れないということです。露出量が増えたから売れる、という単純な話ではありません。指名検索に効くためには、ブランド名が記憶されるか、クリエイティブが強いか、話題化やUGCが起きるかといった条件が必要になります。
キャンペーンの評価においても同じことが言えます。応募数が伸びたことは参加のしやすさを示していますが、それが購買や想起につながったかは別途確認しなければなりません。
※上記は一例であり、すべてのブランド・カテゴリに当てはまるものではありません。
量ではなく質をどう見るか
では、量以外に何を見ればいいのか。ひとつは「応募の質」です。
同じ1,000件の応募でも、その中身によって意味はまったく変わります。初めてその商品を買った人が多いのか、もともとのリピーターが多いのか。1人が1回ずつ応募した1,000件なのか、100人が10回ずつ応募した1,000件なのか。前者ならトライアル獲得として機能しており、後者なら既存顧客の購買頻度を上げたことになります。どちらも成果ですが、狙っていたものと一致しているかは別の話です。
レシート投稿型であれば、購入店舗や併売商品まで確認できます。想定していた売場で買われているか、想定していた併売が起きているか。応募データを「何件集まったか」で終わらせず、「誰がどう買ったか」まで開くと、次の施策の設計材料になります。
もうひとつが、UGCの質です。投稿数という量だけでなく、どんな内容が投稿されたかを確認してください。商品の使用シーンが具体的に語られている投稿と、景品への言及だけで終わっている投稿では、二次活用できる価値がまったく違います。
集まったUGCを100件並べて、そのうち何件が「商品の魅力が伝わる投稿」だったか。この視点で振り返ると、応募条件やお題の設計がうまくいったかどうかが見えてきます。次回の企画で改善すべき点も、投稿数の増減より投稿内容の傾向から見つかることのほうが多いはずです。
7. キャンペーンを「単発」で終わらせないために
SNSキャンペーンの成否を分ける最大の要素は、実は企画そのものよりも「終わった後に何を用意しているか」にあります。
一過性で終わる原因は後工程の欠如
キャンペーンが終わった翌週、フォロワー数が減り始め、集まったUGCは誰にも使われないまま埋もれていく。多くの現場で見られる光景です。
原因は、キャンペーンを「イベント」として設計してしまっていることにあります。開始から終了までの期間に意識が集中し、その後どうするかが計画に入っていない。結果として、せっかく獲得した資産が活用されずに消えていきます。
企画段階で、「このキャンペーンで得たものを、次にどう使うか」まで決めておく。これだけで単発施策が継続的な取り組みに変わります。
獲得したフォロワー・友だちをどう活かすか
キャンペーンで獲得したフォロワーは、まだブランドとの関係が浅い状態です。ここで通常運用の投稿に戻してしまうと、関心を持たれないまま離脱していきます。
有効なのは、キャンペーン終了直後に「参加してくれた人向け」のコンテンツを用意しておくことです。当選発表だけで終わらせず、商品の使い方や開発背景など、参加をきっかけに興味を持った人が次に知りたい情報を届けます。
LINE友だち追加を条件にした場合は、さらに直接的なアプローチが可能です。クーポン配布や新商品情報の配信を通じて、キャンペーン参加を起点とした継続的な関係づくりができます。
集まったUGCの二次活用
ハッシュタグ投稿やフォトコンテストで集まったUGCは、キャンペーン後こそ価値を発揮します。
活用先として代表的なのは、広告クリエイティブ、ECサイトのレビュー欄、店頭POPの3つです。第三者の生の声として信頼されやすく、企業が作ったクリエイティブでは出せない説得力があります。
ただし二次利用には投稿者の許諾が必要です。応募規約の段階で、利用する媒体の範囲と期間を明示しておいてください。後から個別に許諾を取るのは実務上ほぼ不可能です。
次回設計へのデータの返し方
最後に記録の残し方です。
振り返りの際「応募数◯件、フォロワー◯人増」という結果だけを記録している例が多いのですが、これでは次回に活かせません。応募条件をどう設定したか、告知はどのチャネルからどのタイミングで行ったか、どの投稿が最も反応を集めたか——設計の中身まで含めて残しておくことで、次回の企画で再現できる要素が見えてきます。
社内の複数チームで実施している場合は、この記録を共有できる形にしておくと組織としてのノウハウ蓄積につながります。
8. 実施前に必ず確認したい法規制とガイドライン
SNSキャンペーンは、関連法規と各SNSのガイドラインを確認したうえで実施する必要があります。違反した場合、行政指導やアカウント凍結といったリスクがあるため、企画段階でのチェックが欠かせません。
景品表示法|景品類の上限額
景品表示法では取引に付随して提供する景品類の上限額や総額が定められています。
前述のとおり、購入を条件としないオープンキャンペーンについては、景品類の上限額に関する規制が撤廃されています。一方、商品購入を条件とする一般懸賞や、購入者全員に提供する総付景品には、取引価額に応じた上限額が設けられています。

企画条件によって適用される区分が変わるため、応募条件・取引価額・景品の提供方法を整理したうえで、消費者庁の景品規制ページで該当区分を確認してください。判断が難しい場合は、必ず社内法務や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
ステルスマーケティング規制への対応
2023年10月1日から、広告であることを隠すステルスマーケティングは景品表示法違反となりました。
SNSキャンペーンで注意が必要なのは、企業が当選者の投稿内容を指定したり、インフルエンサーに投稿を依頼したりするケースです。これらが「事業者の表示」に該当する場合、広告であることを一般消費者が判別できる形で明示する必要があります。「#PR」「#提供」といった表記の徹底に加え、各SNSのブランドコンテンツ機能の利用も検討してください。
なお、どこまでが事業者の表示に該当するかの線引きは、個別の事情によって判断が分かれます。この点についても、専門家への確認を強くおすすめします。
各SNSのキャンペーンガイドライン
各SNSはプロモーション実施に関するルールを個別に定めています。
Xでは複数アカウントでの応募や同一内容の反復投稿を促さないこと、Instagram(Meta)では不正確なタグ付けを応募条件にしないこと、TikTokでは商用コンテンツの表示要件を満たすこと、LINEでは利用するサービスごとの規約を確認することが求められます。
これらのガイドラインは更新されるため、過去の実施時に確認した内容をそのまま流用するのは危険です。公開直前に最新版を確認する運用をルール化しておくと、手戻りを防げます。
出典:ステルスマーケティング規制|消費者庁
関連記事:SNS炎上のリスクと備え方
9. まとめ
SNSキャンペーンの全体像と選び方について解説してきました。要点を整理します。
- オープンキャンペーンとクローズドキャンペーンの分岐を最初に決める — 参加ハードル、取得できるデータ、景品の上限額がここで決まります。企画の初期段階で確定させてください。
- 目的は1つに絞る — 認知拡大・フォロワー獲得・トライアル促進・リピート促進・ファン育成のどれを主目的とするかで、選ぶべき型も設定すべきKPIも変わります。
- 媒体はファネル上の役割で選ぶ — 利用者数の多さではなく、認知を担わせるのか、比較検討に残したいのか、リピートの基盤にしたいのかで判断します。
- 応募数・imp数だけで評価しない — 露出量と実売・指名検索のあいだには単純な比例関係が見出しにくい傾向があります。応募の中身やUGCの質といった、量以外の観点をあわせて確認してください。
- 終わった後の設計まで含めて企画する — 獲得したフォロワーとUGCをどう使うかを事前に決めておくことが、単発施策を継続的な資産形成に変えます。
SNSキャンペーンは手法が多い分、「何を選ぶか」で迷いやすい施策です。しかし目的から逆算すれば、選択肢は自然と絞られます。まずは自社が今どの課題を抱えているのかを言語化するところから始めてみてください。
【執筆者プロフィール】
兼重 成美
株式会社エクスクリエ マーケティングGインフルエンサー会社でのキャスティング・ディレクション実務を経て、インフルエンサー施策をテーマにしたウェビナーの企画・運営に従事。現在はクロス・マーケティンググループにて、「エクスクリエ」「REECH」「トキオ・ゲッツ」の3社横断でマーケティングを担当。エクスクリエおよびREECHのオウンドメディア運営・コンテンツ制作を担い、REECHではSNS施策の実務情報を広告代理店・メーカーのマーケター向けに発信している。
インフルエンサーマーケティングならREECH DATABASE
REECHは国内70万件以上のインフルエンサーアカウントデータと3億件超の投稿データを保有するインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「REECH DATABASE」を運営しています。視聴率・フォロワー成長率・過去の人気クリエイティブ検索など30項目以上の分析指標をもとに、再現性の高いキャスティングと効果測定を実現します。
「キャンペーンの成果をどう評価すればいいかわからない」といったご相談も承っております。施策のご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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