「SNSキャンペーン」と一言で言っても、フォロー&リポスト、ハッシュタグ投稿、インスタントウィン、レシート応募など、その手法はさまざまです。いざ自社でやろうとすると、まず「何を選べばよいのか」で迷ってしまいます。かといって他社の成功事例を探しても「この事例が自社の課題に合っているのか」が分からない——そんな悩みを抱える担当者は少なくありません。

他社の事例とは目的も商材も予算も違えば、そのまま真似ても同じ成果が出るとは限りません。大切なのは事例を「面白いかどうか」ではなく「何のための施策か」という目的の軸で捉え、自社の課題に近いものを手本にしながら自社に合った施策へと設計していくことです。

本記事ではSNSキャンペーンの成功事例を「認知拡大・フォロワー獲得・トライアル促進・リピート促進・ファン育成」という5つの目的別に厳選して紹介します。各事例には成果と出典リンクを添えているので、自社に近い企業がどう設計しているかを具体的に確認できます。読み終える頃には、数ある事例の中から「自社が手本にすべき一つ」を見極める視点が手に入っているはずです。

この記事でわかること

✔目的から逆算するSNSキャンペーン事例の見方
SNSキャンペーンは手法が多く、他社事例を見ても自社に合うかは判断しづらい。まず「何のための施策か」という目的から事例を捉える視点が要る。

✔5つの目的軸で厳選した他社の成功事例と成果
認知拡大からファン育成まで、目的別に実例を確認できる。

✔自社の課題に近い事例を選ぶ判断基準
商材・目的・規模から、どの事例を手本にすべきかを見極められるようになる。

SNSキャンペーンの成功事例を「目的別」に見るべき理由

「他社の事例が自社に合っているのか分からない」を解消する

SNSキャンペーンの成功事例は数多くありますが、いざ眺めてみると「どれも面白そうだが、この事例が自社に合っているのかは分からない」という状態になりがちです。

事例を正しく参考にするには、「どんな企画が面白いか」から入るのではなく、「自社は今、何を解決したいのか」という目的から入り、その目的で成果を出している事例だけを見るのです。認知を広げたい企業がリピート促進の事例を真似ても噛み合いませんし、その逆もまた然りです。

5つの目的軸でSNSキャンペーンを整理する

SNSキャンペーンの目的は、購買までの流れに沿って大きく5つに分けられます。

  • 認知拡大:まだ知られていない商品・ブランドを、話題化と拡散で広く知ってもらう
  • フォロワー獲得:キャンペーンを入り口に継続的に情報を届けられる自社の資産を増やす
  • トライアル促進:認知で終わらせず初回購入や来店という「最初の一歩」を後押しする
  • リピート促進:一度きりの購入を複数回・継続的な購買へとつなげる
  • ファン育成:商品理解や愛着を深め、能動的に語ってくれる関係を築く

この5つは、SNSキャンペーンの種類・目的別の選び方をまとめた記事でも解説している購買ファネルの考え方と対応しています。手法(フォロー&リポスト、インスタントウィン、ハッシュタグ投稿、レシート応募、投票・総選挙など)は、この目的のどれを狙うかで選ぶべきものが変わります。

関連記事:SNSマーケティングとは?主要4媒体の特性と効果を出す進め方を解説

そもそもSNSキャンペーンはなぜ成果につながるのか

目的別に事例を見る前にSNS上の接点が実際の購買にどう影響するのかを押さえておきましょう。エクスクリエの調査(2025年8月)によると、Instagramで保存したタイアップ投稿の商品を実際に購入した経験がある人は55.2%と、半数を超えています。SNS上での情報接触は、単なる「認知」で終わらず、実際の購買行動にまで結びついていることがうかがえます。

だからこそSNSキャンペーンは、フォロワー数やいいね数といった表面的な数字を集めて終わりにするのではなく、認知から購買・リピートまでのどの段階を動かしたいのかを定めて設計することが重要になります。

出典:SNSにおける購買行動に関する調査結果〜Instagram編〜(株式会社エクスクリエ)

【認知拡大】話題化・リーチを狙った成功事例

まだ広く知られていない商品やブランドを、拡散と話題化によって一気に届ける段階です。参加ハードルを下げつつ、思わず人に話したくなる「仕掛け」があるかどうかが成果を左右します。

TBSテレビ|ドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」夕暮れ限定AR

ドラマの放送前プロモーションとして、Xで展開されたAR活用キャンペーンです。夕暮れの空にスマートフォンをかざすと、主演俳優からボイスメッセージ入りのAR動画が届く仕組みで、体験できるのは16時〜18時のみという「限定性」が特徴でした。毎日メッセージの内容を変えることで、繰り返し体験したくなる設計にしています。

1週間限定の企画ながら、体験回数は9.6万回以上、体験人数は約3万人にのぼり、1人あたり平均3回のリピート体験を生みました。ARの撮影機能を通じてSNS投稿へ自然に誘導し、ハッシュタグ付き投稿は1,000件を超えています。「限定×体験×投稿誘導」を組み合わせ、放送前に世界観への期待を高めた好例です。

出典:9.6万再生を記録!ドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」の世界観とマッチした限定AR企画(LESSAR)

カルビー|「#じゃがりこ1個分のごめんね」

じゃがりこ公式がXで実施した、投稿型とインスタントウィンを組み合わせたキャンペーンです。公式アカウントをフォローし、指定ハッシュタグを付けて「謝りたい相手やエピソード」を投稿すると、その場で当落結果が届きます。さらに相手にメンションを付けて投稿した人から抽選で100名に景品が当たるWチャンスも用意されました。

12月10日「ごめんねの日」という時事性を活かし、単なる応募ではなく「ユーザー同士のコミュニケーション」を巻き込んだ点が特徴です。ブランド想起と話題化を両立させた設計といえます。

出典:SNSキャンペーンのやり方7ステップ|成功事例10選(OWNLY)

明治|「うますぎソフト」まちがい探しキャンペーン

「うずまきソフト」が「うますぎソフト」に見える——というユーザーの投稿(UGC)をきっかけに生まれた企画です。明治公式のXアカウントで、2つのパッケージを並べた「まちがい探し」を出題し、多くのいいね・リポスト・コメントを集めました。その話題化を受けて期間限定パッケージ「明治 うますぎソフト」を実際に発売し、店頭で見つけたユーザーによる投稿がさらなる話題を呼びました。

企業が大々的に告知するのではなく、消費者が自分で発見して楽しめる余白を残したことで、定番商品に「SNSで話題のあのアイス」という新しい価値が加わりました。ユーザーの声を起点に企画し、商品にまで還元した点が学べる事例です。

出典:“UGC=お客様の声”を商品に還元。明治「うずまきソフト」に見るUGC活用(ホットリンク)

【フォロワー獲得】新規接点を増やす成功事例

キャンペーンをきっかけにキャンペーン後も継続的に情報を届けられる「フォロワー」という資産を積み上げる段階です。応募条件に「フォロー」を組み込むのが基本形になります。

三河屋製菓|父の日プレゼントキャンペーン

菓子メーカーの三河屋製菓が、公式Instagramで実施したプレゼントキャンペーンです。応募方法は「公式アカウントをフォローして、キャンペーン投稿にいいねを押すだけ」というシンプルな設計で、参加ハードルを極力下げています。当選者には人気商品の詰め合わせが贈られました。

キャンペーン投稿には4,000件を超えるいいねが集まり、同社は同様の企画を定期的に実施しています。派手な仕掛けがなくても、「低ハードル×定期開催」でフォロワーとの接点を着実に増やせることを示す事例です。特別な予算をかけにくい企業ほど参考になります。

出典:父の日におすすめ三河屋製菓の人気商品5品セットが当たる(おかしとわたし)

フォロー&リポスト型は「立ち上げ期」の定番

個別事例に加えて、フォロワー獲得の王道である「フォロー&リポスト型」の考え方も押さえておきましょう。公式アカウントのフォローと対象投稿のリポストで応募が完了するこの形式は、参加ハードルが極めて低く、リポストによる二次拡散でフォロワーとリーチを同時に伸ばせます。

アカウントを立ち上げたばかりで、まず母数を増やしたい段階に最も向いています。一方で、景品目当ての質の低いフォロワーが増えやすい側面もあるため、後述する「景品設計」との組み合わせが重要になります。

【トライアル促進】購買のきっかけをつくる成功事例

認知やフォロワー獲得で終わらせず、「初回購入」や「来店」という具体的な行動を後押しする段階です。購入レシートを応募条件にする形式が代表的で、施策の成果を実売として可視化できます。

菊水|レシート応募 × インスタントウィン

麺類メーカーの菊水が「コク生ラーメンシリーズ」の購入レシートを応募条件に実施したマストバイキャンペーンです。対象商品を購入してレシートをキャンペーンサイトにアップロードすると、その場で当落が分かるインスタントウィン形式で、1,000名に選べるデジタルギフト1,000円分が当たる設計でした。

レシート応募のため商品へのシール貼付作業が不要で、景品もデジタルギフトのため発送の手間がかからない——という運用面の効率も両立しています。「購入」という一歩を、その場で当たるワクワク感で後押しした事例です。

出典:マストバイキャンペーンとは?成功事例(Winasキャンペーンシステム)

アサヒ飲料|「肉にはタンサン!」併売レシートキャンペーン

炭酸水「ウィルキンソン」と「肉」を一緒に購入したレシートで応募できる、併売促進型のキャンペーンです。景品を「料理教室」「調理器具」など料理に関するものに集中させることで、料理好きというターゲット像を明確に絞り込んでいます。

単品の購入ではなく「組み合わせ購入」を促す設計は、客単価の向上や新しい飲用シーンの提案につながります。自社商品を「何と一緒に使ってほしいか」を起点に企画すると、トライアルの質が変わることを示す事例です。

出典:レシートキャンペーン成功事例を3社厳選(デジコ)

JR東日本首都圏本部|FUN!TOKYO! 謎解きプレゼントキャンペーン

山手線を舞台にしたリアルな謎解きイベントと連動したInstagramキャンペーンです。毎週火曜に出題される謎を解き、ストーリーズで回答すると応募が完了し、抽選で40名に謎解きキットがプレゼントされました。

リアルイベントとSNSを掛け合わせることで、イベントの認知拡大と実際の参加・来訪を同時に促した点が特徴です。店頭やイベント、施設への送客を狙う場合に応用できる設計といえます。

出典:SNSキャンペーンのやり方7ステップ|成功事例10選(OWNLY)

【リピート促進】継続購買・再来店を促す成功事例

一度きりの購入を複数回・継続的な購買へとつなげる段階です。「買うほど得をする」仕組みや、購入後も接点が続く導線を用意することがポイントになります。

サンスター|「お口の健康応援キャンペーン」レシート × LINEポイント

対象商品の購入レシートを撮影し、LINEの専用フォームから応募すると、購入金額に応じてLINEポイントがもらえるキャンペーンです。購入金額が大きいほど多くのポイントが得られる設計で、まとめ買いや継続購買を自然に後押ししています。

好評を受けて別商品での第二弾も実施されました。LINEを応募窓口にすることで、キャンペーン後も友だちとしてメッセージやクーポンを届けられる——というリピート導線まで含めて設計されている点が学べます。

出典:マストバイキャンペーンとは?成功事例4選(シャトルロックジャパン)

スミフルジャパン|QUOカードPayマストバイキャンペーン

バナナなどの果物を扱うスミフルジャパンが実施した、対象商品を税込250円以上購入すると景品が当たるマストバイキャンペーンです。従来の郵便応募に加えてWEB応募を用意し、WEB応募の景品をデジタルギフト(QUOカードPay)にすることで、応募のハードルを下げました。

その結果、レシート応募キャンペーンの応募数は従来比130%を達成。景品を店舗で使えるデジタルギフトにしたことで、再来店のきっかけづくりにもつながりました。応募窓口と景品の設計を見直すだけで、既存キャンペーンの成果を伸ばせることを示す事例です。

出典:マストバイキャンペーンとは?今注目される理由と成功事例(QUOカード)

【ファン育成】関係を深める成功事例

商品理解や愛着を深め、ユーザーが自ら語ってくれる関係を築く段階です。投票・総選挙やアンバサダー募集など、ユーザーが「参加している」という実感を持てる企画が向いています。

JA全農|にっぽんエール「全国ご当地グミ総選挙2024」

JA全農の商品ブランド「ニッポンエール」のご当地グミの中から、「推しグミ」に投票して1位を決めるInstagramの投票型キャンペーンです。「よしもと住みます芸人」をアンバサダーに起用し、地域別に推しグミを紹介するなど、参加そのものを盛り上げる工夫が凝らされています。

投票は毎日1回でき、投票者の中から抽選で90名に景品が当たるプレゼントも同時開催されました。投票という能動的な参加を通じて、ユーザーが商品への理解と愛着を深める設計になっています。地域性やアンバサダーを絡めて、単なる抽選以上の関与を生み出した事例です。

出典:にっぽんエール全国ご当地グミ総選挙2024!投票結果発表(おかしとわたし)

フォーモスト・ブルーシール|「Polar Bear総選挙2022」

ブルーシールアイスクリームのキャラクター「ポーラベアー」を主役にした、Xの投票型キャンペーンです。公式アカウントをフォローのうえ、特設サイトから「推しの党」に投票してポストすると応募が完了し、抽選で商品詰め合わせが当たる設計でした。

約3週間で総投票数は2,600件を超え、投票を通じてユーザーが「商品の魅力」をあらためて見つめ直す機会を生み出しました。ハッシュタグ投稿によるブランド認知の広がりにもつながっています。キャラクターを軸に「選ぶ楽しさ」を提供し、ファンの熱量を可視化した事例です。

出典:SNSキャンペーンのやり方7ステップ|成功事例10選(OWNLY)

アクア|セカンド冷蔵庫アンバサダーキャンペーン

冷蔵庫をPRするアンバサダーを募集する、Instagramのアンバサダー型キャンペーンです。公式アカウントをフォローし、希望する商品をコメントするだけで応募でき、当選者には商品がプレゼントされ、数カ月にわたって商品にまつわる投稿を行います。

応募の段階でユーザーの商品理解が深まり、ブランドと親和性の高いアンバサダーを獲得できる点が特徴です。キャンペーン終了後もアンバサダーによるPR投稿が資産として残り続けます。フォロワーを「一緒に発信してくれる仲間」に変える設計として参考になります。

出典:SNSキャンペーンのやり方7ステップ|成功事例10選(OWNLY)

成功事例に共通する4つのポイント

目的は違っても成果を出した事例に共通する設計の勘所があります。自社で企画する際のチェックリストとして活用してください。

1. 目的を1つに絞る

「認知もフォロワーも、売上も」と欲張ると、訴求も応募条件もぼやけてしまいます。まず解決したい課題を一つに定め、その目的に合った手法と、目的に沿った見るべき指標を先に決めておくことが出発点です。ここがブレると、企画も振り返りも定まりません。

2. 参加ハードルと拡散のバランスを取る

応募ステップが増えるほど参加者は離脱します。一方で、簡単すぎると質の低い応募が増えることもあります。狙う目的に応じて、「どこまで手間をかけてもらうか」を設計しましょう。認知やフォロワー獲得なら低ハードルに、UGCやファン育成ならある程度の手間を許容する、といった按配が目安です。

3. 景品は「誰でも欲しいもの」より「ファンが欲しいもの」

高額なだけの景品は、商品やブランドに関心のない層まで集めてしまい、結果としてフォロワーや応募の質を下げます。ターゲットやブランドテーマと合致した景品を選ぶことで、その後の関係につながる「質の高い参加者」を集められます。

4. 単発で終わらせず、二次活用・継続導線まで設計する

キャンペーンで得たフォロワー・UGC・購入者を、その後どう活かすかまで考えておくことが、一過性のバズと「資産になる施策」の分かれ目です。集まったUGCを広告やECサイトに二次活用する、LINEの友だちにリピートを促す、といった後工程を最初から設計しておきましょう。

実施前に必ず確認したい法規制(景表法・ステマ規制)

SNSキャンペーンは、各SNSのガイドラインと関連法規を守ったうえで実施する必要があります。企画段階でのチェックを怠ると、キャンペーンの中止やブランドイメージの毀損につながりかねません。

景品表示法(景表法)

景品表示法では、提供できる景品類の上限額が定められています。取引価額や懸賞の方式(一般懸賞・共同懸賞・総付景品)によって上限が変わるため、景品を決める段階で必ず確認が必要です。

ステマ規制(2023年10月施行)

2023年10月に施行されたステルスマーケティング規制により、企業が対価を渡して行わせる投稿や、アンバサダー・インフルエンサーを起用した施策では、広告・PRであることを明示する必要があります。「#PR」「#提供」などの表記を徹底し、消費者に広告だと分かる形で運用しましょう。

なお、景表法やステマ規制の適用可否は、施策の内容や契約形態によって判断が分かれる場合があります。実施前には、必ず専門家・弁護士に確認することをおすすめします。

関連記事:SNS炎上リスクの備え方|インフルエンサー施策を守る実践ガイド

まとめ

今回ご紹介したのは、数あるSNSキャンペーンの成功事例のほんの一部です。大切なのは、事例の数を追うことでも、良さそうな事例をそのまま選んで真似ることでもありません。自社の目的に近い事例を目的の軸で見つけ、それを手本にしながら自社ならではのキャンペーンを設計していくことです。

  • 事例は「面白いか」ではなく「何のための施策か」という目的の軸で整理する
  • SNSキャンペーンの目的は、認知拡大・フォロワー獲得・トライアル促進・リピート促進・ファン育成の5つに大別できる
  • 各目的で成果を出している他社事例を参考に、自社の商材・目的・規模に近いものを手本にする
  • 目的を1つに絞り、参加ハードル・景品・継続導線を設計することが成果の共通項
  • 実施前には景表法・ステマ規制を必ず確認し、不安があれば専門家に相談する

まず自社が今どの段階の課題を抱えているかを見極め、それに合った事例から具体的な設計に落とし込んでいきましょう。

【執筆者プロフィール】
兼重 成美
株式会社エクスクリエ マーケティングG

インフルエンサー会社でのキャスティング・ディレクション実務を経て、インフルエンサー施策をテーマにしたウェビナーの企画・運営に従事。現在はクロス・マーケティンググループにて、「エクスクリエ」「REECH」「トキオ・ゲッツ」の3社横断でマーケティングを担当。エクスクリエおよびREECHのオウンドメディア運営・コンテンツ制作を担い、REECHではSNS施策の実務情報を広告代理店・メーカーのマーケター向けに発信している。

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