レピュテーションリスクとは企業やブランドに対する評判が悪化し、事業に損害が生じるリスクのことです。法務や広報の領域で使われることが多い言葉ですが、SNS施策を担当する立場でも無関係ではありません。SNS上でブランドがどう語られているかは、購買の判断に直接影響するためです。

SNS上のリスクというと、多くの人が炎上を思い浮かべます。ただ、評判が損なわれるのは炎上したときだけではありません。PR投稿が続いて「広告ばかり」と受け取られる、ブランドと合わないインフルエンサーの起用で違和感を持たれる、不自然な口コミが目立って信頼を失うといった、目立った騒ぎにならないまま評判が下がっていくケースもあります。こうした変化は数値に表れにくく、気づいたときには施策全体の反応が鈍っていることも少なくありません。

本記事では、レピュテーションリスクの意味と炎上・風評被害との違いを整理したうえで、SNS施策で起きやすいリスクを「自社アカウント」「インフルエンサー」「生活者の口コミ」の3つの発信源に分けて解説します。あわせて、企画・選定・運用の各段階で確認したい項目も紹介します。社内やクライアントへの説明に使える判断材料が得られるはずです

この記事でわかること

✔SNS施策におけるレピュテーションリスクの範囲
炎上のような急な事態だけでなく、施策の積み重ねで信頼が少しずつ損なわれる場合も含まれる。まず定義と、炎上・風評被害との違いを押さえる必要がある。

✔発信主体別のリスク整理
自社アカウント、インフルエンサー、生活者の口コミの3つに分けて、起きやすいリスクとその兆候を整理する。

施策の段階別の確認観点
企画・起用・運用の各段階で確認すべき項目がわかり、社内稟議やクライアントへの説明に使える根拠が身につく。

レピュテーションリスクとは

意味と「レピュテーション」が指すもの

レピュテーションリスク(Reputation Risk)とは、企業やブランドに対する評判が悪化し、売上や取引、採用など事業に損害が生じるリスクのことです。日本語では「評判リスク」「風評リスク」と訳されることもあります。

ここでいう「レピュテーション」は、消費者、取引先、株主、従業員など、企業を取り巻く人々が抱く信頼や印象の総体を指します。商品の品質そのものではなく、「この会社・このブランドはどう見られているか」という受け止められ方の問題です。そのため、事実として問題がなくても、誤解や違和感が広がれば評判は下がります。

評判は財務諸表に表れにくい資産ですが、一度損なわれると回復に時間がかかります。SNSが普及した現在は、生活者一人ひとりの投稿が評判の形成に直接関わるようになりました。SNS施策の担当者にとっても、無関係なテーマではなくなっています。

炎上・風評被害との違い

レピュテーションリスクと混同されやすい言葉に「炎上」と「風評被害」があります。どちらもレピュテーションリスクが表に出た形の一つで、レピュテーションリスクのほうが広い概念です。

用語

意味

現れ方

レピュテーションリスクとの関係

炎上

批判的な投稿が短期間に集中し、拡散する状態

急に起き、目に見える

急性的に顕在化した形

風評被害

事実と異なる噂や誤情報によって評判が損なわれること

急にも徐々にも起きる

外部要因によって顕在化した形

信頼の目減り

小さな違和感や不信感が積み重なり、評判が少しずつ下がること

徐々に進み、気づきにくい

慢性的に進行する形

SNS施策で見落とされやすいのは、表の3行目にあたる「信頼の目減り」です。炎上は発生すれば誰でも気づきますが、「このブランドのPR投稿はどれも同じに見える」「口コミが良すぎて逆に怪しい」といった受け止め方は、数値にも苦情にも表れにくいまま広がります。そのため、炎上対策だけでは、レピュテーションリスクの一部にしか備えられていない可能性があります。

SNS施策の担当者が押さえておくべき理由

SNS上の評判が重要なのは、それが購買行動に直結しているからです。

エクスクリエの調査(2026年8月)によると、SNSや動画サービスの情報を参考に直近で購入した商品について、購入決定に最も影響した発信者は、食品・飲料・菓子(28.1%)、日用品・生活消耗品(34.7%)、コスメ・スキンケア(25.2%)のいずれでも「一般ユーザー(商品の感想を投稿しているなど)」が最多でした。ファッション・アパレルでは「企業やブランドの公式アカウント」が30.2%で最多となっています。
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特に食品や日用品、化粧品といった日常的に購入する商品では、企業の発信よりも生活者の感想が購入の決め手になりやすい傾向がうかがえます。裏を返せば、SNS上の口コミの質や、それに対する生活者の信頼が揺らぐと、購買にも影響が出るということです。SNS施策は評判をつくる手段であると同時に、評判を損なう原因にもなり得ます。この両面を理解しておくことが、担当者に求められています。

関連記事:【エクスクリエ調査レポート】「SNS・動画サービスにおける購買行動に関する調査(2026年)」

レピュテーションリスクの種類

レピュテーションリスクは、発生源によって「内部要因」と「外部要因」の2つに分けて整理されることが一般的です。自社の行動や体制から生じるものが内部要因、自社の外側から波及してくるものが外部要因です。対策の打ち方が変わるため、まずどちらに該当するかを見極めることが出発点になります。

内部要因によるリスク

内部要因は、自社の行動や判断に起因するリスクです。従業員や経営者の不祥事、製品・サービスの品質問題、法令違反や不適切な表示、情報漏洩などが該当します。自社に原因があるぶん、事前の体制整備によって発生確率を下げられる領域でもあります。

類型

具体例

従業員・経営者の不祥事

ハラスメント、違法行為、私的アカウントでの不適切投稿

製品・サービスの品質問題

欠陥や不具合、表示の不正、リコール対応の遅れ

法令違反・不適切な表示

景品表示法違反、誇大な広告表現

情報漏洩

顧客情報や機密情報の流出

マーケティング部門に関わりが深いのは、広告表現や販促物の表示、キャンペーン設計といった領域です。SNS施策でいえば、自社アカウントの投稿内容や、インフルエンサーへの依頼の仕方がここに含まれます。

外部要因によるリスク

外部要因は、自社に直接の落ち度がなくても影響を受けるリスクです。事実と異なる情報の拡散、取引先やパートナーの問題、業界全体への不信感などが該当します。発生そのものを防ぐことは難しいため、早く気づいて適切に対応できる体制を整えておくことが中心の対策になります。

類型

具体例

誤情報・デマの拡散

事実と異なる内容がSNSや掲示板で広まる

取引先・パートナーの問題

起用したインフルエンサーや協業先で問題が発生する

生活者の否定的な発信

使用感への不満やネガティブな口コミの蓄積

業界全体への不信感

同業他社の問題が業界のイメージ低下につながる

インフルエンサー施策は、この2つにまたがる点が特徴です。誰に依頼し、どのような内容を求めるかは自社が決める内部要因ですが、実際に投稿するのはインフルエンサー本人であり、その言動や受け取られ方は外部要因として働きます。次の章では、SNS施策に関わるリスクを発信源ごとに具体的に見ていきます。

SNSでレピュテーションリスクが生まれる3つの発信源

SNS施策に関わるレピュテーションリスクは、誰の発信から生まれるかによって、起きやすいリスクも打てる手も変わります。ここでは「自社アカウント」「インフルエンサー」「生活者の口コミ・UGC」の3つに分けて整理します。

発信源

起きやすいリスクの例

企業がコントロールできる範囲

自社アカウント

表現への批判、ユーザー対応への不満、キャンペーン設計への反発

大きい

インフルエンサー

ブランドとの不適合、PR表記の不備、過去投稿の問題、PR投稿の多さによる不信感

中程度(起用と依頼内容で調整)

生活者の口コミ・UGC

ネガティブな口コミの蓄積、キャンペーン由来の不自然な投稿の偏り

小さい(直接の制御は難しい)

自社アカウントの発信

自社アカウントは、企業が内容を最もコントロールしやすい発信源です。その一方で、投稿がそのままブランドの公式見解として受け取られるため、表現の選び方ひとつで評判に影響します。

よくあるのは、ジェンダーや家族観、容姿などに関わる表現が、一部の生活者から「押しつけ」「配慮に欠ける」と受け止められるケースです。制作側に悪意がなくても、受け手の立場によって解釈は変わります。また、ユーザーからのコメントや問い合わせへの返信がそっけない、不公平に見えるといった対応面も、スクリーンショットとともに拡散されることがあります。

キャンペーン設計にもリスクは潜んでいます。応募条件が複雑で当選者がわかりにくい、フォローやリポストを過度に求めるといった設計は、「数字を集めたいだけ」と見られかねません。キャンペーンの型や景品の上限など、設計時に押さえておきたいルールは次の記事で解説しています。

関連記事:SNSキャンペーンとは?種類・目的別の選び方を解説

インフルエンサーの発信

インフルエンサー施策では、投稿するのは企業ではなくインフルエンサー本人です。そのため、企業が表現を細かく管理しにくく、起用する相手を選ぶ段階でリスクの多くが決まります。

まず注意したいのが、ブランドとインフルエンサーの不適合です。フォロワー数やエンゲージメントが十分でも、普段の発信内容や価値観がブランドと合わなければ、フォロワーに「なぜこの人がこの商品を?」という違和感を与えます。この違和感は、商品への不信感やブランドイメージの低下につながりやすいものです。

次にPR投稿の多さです。短期間にさまざまなブランドのPR投稿をしているアカウントは、フォロワーから「案件ばかり」と見られていることがあります。そうしたアカウントに依頼すると、投稿が届いても内容が信頼されにくくなります。

過去の投稿を確認する際は、見るべき観点を決めておくと判断がぶれません。実務では、次の4つに注目すると起用後のリスクを把握しやすくなります。

一つ目は実態より大きく見せる傾向があるかどうかです。まだ公表できない案件を匂わせる投稿や、誇張した表現が習慣になっているアカウントは、商品の紹介でも同じ傾向が出る可能性があります。

二つ目は誤投稿のリスクです。飲酒中の投稿や非公開アカウントの内容を誤って公開した経験があるかを確認します。

三つ目は撮影時の配慮です。写真や動画に他社商品が映り込んでいないか、生活感のある背景に個人情報が入っていないかといった点に注意が払われているかを見ます。

四つ目はコメント欄の状態です。批判的なコメントが日常的に多いアカウントは、そのアカウントに向けられた不満が、紹介した商品やブランドにも向かうことがあります。

PR表記の不備も重要なリスクです。こちらは次の章で説明するステルスマーケティング規制と関わるため、特に注意が必要です。インフルエンサー本人の言動が問題になった場合の備えについては、次の記事で起用前から炎上時までの流れを整理しています。

関連記事:SNS炎上リスクの備え方|インフルエンサー施策を守る実践ガイド

生活者の口コミ・UGC

生活者の口コミやUGC(ユーザー生成コンテンツ)は、前述の調査でも購入決定への影響が大きい発信源です。一方で、企業が内容を直接コントロールすることはできません。

ここで起きやすいリスクの一つは、ネガティブな口コミの蓄積です。商品の使い勝手や品質に関する不満が少しずつ投稿され、検索結果やハッシュタグ上に残っていくと、購入を検討している人の目に触れ続けます。一件ごとは小さな声でも、放置すると「評判の悪い商品」という印象が定着しかねません。

もう一つはキャンペーンをきっかけにした投稿の偏りです。投稿を条件にしたプレゼント企画などで、似た文面や写真の投稿が短期間に集中すると、生活者から「やらせではないか」と疑われる場合があります。本来は自然な口コミを増やすための施策が、かえって口コミ全体の信頼性を下げてしまう例です。口コミは量だけでなく、内容の具体性や多様さが信頼の土台になることを意識しておく必要があります。

ステルスマーケティング規制とレピュテーションリスク

規制の概要

2023年10月1日から、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)が景品表示法の不当表示として規制対象になりました。事業者が関与した広告であるにもかかわらず、消費者がそれを広告だと判別しにくい表示が禁止されています。

規制の対象となるのは、インフルエンサーではなく広告主である事業者です。企業がインフルエンサーに投稿を依頼したり、商品を提供して投稿内容に関与したりした場合、その投稿に「広告」「PR」などの表記を、消費者にわかりやすい形で入れる必要があります。違反と判断された場合は、消費者庁による措置命令の対象となり、2024年には実際に措置命令も出ています。

出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制」

※ステルスマーケティング規制の該当性は、事業者の関与の度合いや表示の具体的な内容によって判断が分かれます。実際の施策では、必ず弁護士などの専門家に確認してください。

違反でなくても「ステマに見える」ことで生じるリスク

レピュテーションリスクの観点で注意したいのは、法律上の違反にあたるかどうかと、生活者からどう見えるかは別の問題だという点です。

たとえば、PR表記が投稿の末尾や大量のハッシュタグの中に埋もれていると、形式上は表記していても「隠そうとしているのでは」と受け取られることがあります。また、複数のインフルエンサーが同じ時期にほぼ同じ文面で商品を紹介していると、表記があっても「言わされている」という印象を与えやすくなります。

規制の施行によって、生活者の間でもステマへの関心は高まっています。法令を守ることは前提としたうえで、「生活者から見て誠実な発信に見えるか」という視点で投稿内容を確認することが、評判を守るうえで欠かせません。

レピュテーションリスクが顕在化したときの影響

売上・ブランドへの影響

評判の悪化がもたらす影響として、まず考えられるのが売上への影響です。SNS上で否定的な投稿や不信感が広がると、購入を検討している人が選択肢から外す理由になります。前述のとおり、日用品や食品では生活者の感想が購入決定に強く影響する傾向があるため、口コミの印象が悪化した場合の影響も小さくありません。

ブランドへの影響は、売上以上に長く残ることがあります。炎上のように話題になった出来事は、時間が経っても検索結果やまとめ記事に残り、関連キーワードとして表示され続けることもあります。また、信頼の目減りは原因がはっきりしないまま進むため、「施策の反応が落ちてきた」「新商品の立ち上がりが鈍い」といった形で表れても、評判の問題だと気づくのが遅れがちです。

インフルエンサーや取引先との関係への影響

評判の悪化は、施策に関わるパートナーとの関係にも影響します。インフルエンサーは自身の信頼を大切にしているため、SNS上で批判を受けているブランドの依頼は受けにくいと判断することがあります。起用したい相手に断られれば、今後の施策の選択肢が狭まります。

また、広告代理店やPR会社の立場では、クライアントのブランドで問題が起きた場合、施策の設計や起用の判断について説明を求められることもあります。流通や小売との関係でも、SNS上の評判が商談の場で話題になる可能性があります。評判の問題は、マーケティング部門だけにとどまらない点を意識しておく必要があります。

社内の施策継続判断への影響

見落とされやすいのが、社内への影響です。SNS施策で一度でも問題が起きると、社内で「SNSはリスクが高い」という認識が広がり、次の施策の稟議が通りにくくなることがあります。インフルエンサー施策の予算が縮小されたり、承認フローが増えてスピードが落ちたりするケースも考えられます。

こうした事態を避けるためにも、施策を始める前の段階で、どのようなリスクを想定し、どう対策しているかを説明できるようにしておくことが大切です。リスクへの備えを示すことは、施策を止めるためではなく、施策を続けるための根拠になります。

施策の段階別チェックポイント

レピュテーションリスクへの備えは、問題が起きてから考えるのではなく、施策の各段階に組み込んでおくことが効果的です。ここでは「企画」「インフルエンサー選定」「実施中・実施後」の3段階に分けて、確認したいポイントを整理します。

fig 01 段階別チェックポイント

企画段階:目的と表現、想定される受け取られ方

企画段階では、まず施策の目的とそのために選んだ表現や手法が噛み合っているかを確認します。「話題になること」自体が目的化していると、刺激の強い表現を選びやすく、評判を損なうリスクが高まります。

表現については、制作チーム以外の視点を入れて確認するのがおすすめです。性別や年代、立場が異なるメンバーに見てもらい、「不快に感じる人はいないか」「意図と違う受け取られ方をしないか」を確認します。キャンペーンの場合は、応募条件や当選発表の方法がわかりやすいか、景品表示法上の景品規制に沿っているかも、この段階で確認しておきます。

あわせて注意したいのが、投稿文言の指定の仕方です。伝えたい内容を細かく指定しすぎると、複数のインフルエンサーが似た文面で投稿することになり、生活者から不自然に見えます。伝えてほしい要点と、表現をインフルエンサーに委ねる部分を分けて依頼するほうが、結果として信頼されやすい投稿になります。

確認項目

確認の観点

目的と手法の整合

話題化そのものが目的になっていないか

表現

性別・年代・価値観の異なる人が見て違和感はないか

投稿文言の指定

細かく指定しすぎて画一的な投稿にならないか

PR表記の方針

表記の文言と位置を依頼時に指定しているか

インフルエンサー選定段階:PR率・過去投稿・ブランドとの適合

インフルエンサーの選定では、フォロワー数やエンゲージメントだけでなく、そのアカウントがフォロワーからどう信頼されているかを確認します。

確認したい観点の一つが、投稿全体に占めるPR投稿の割合(PR率)です。PR率が高いアカウントは、フォロワーが投稿を広告として受け止めている可能性があり、紹介した商品への信頼につながりにくいことがあります。あわせて、過去のPR投稿で表記が適切に行われていたかも確認しておくと、依頼後のトラブルを避けやすくなります。

過去投稿の確認は、本人の投稿だけを見れば十分というわけではありません。REECHが起用前に確認する範囲は、本人の投稿、本人がリポストした投稿、本人へのリプライ、投稿へのコメント、別アカウントや別名義での投稿、過去のネット記事、匿名掲示板上の投稿と多岐にわたります。本人の発信に問題がなくても、周囲での言及に懸念があるケースがあるためです。

また、確認は起用前の一度きりでは足りません。登録や契約の時点で過去一定期間分を確認し、その後も定期的に見直す運用にしておくと、起用中に生じた変化にも気づけます。継続的に取引するインフルエンサーがいる場合は、確認の周期をあらかじめ決めておくことをおすすめします。

実施中・実施後:口コミの内容とその変化を見る

施策の実施中や実施後は、投稿数や反応数といった量の指標だけでなく、口コミやコメントの内容に目を向けることが大切です。

具体的には、自社ブランド名や商品名、キャンペーン名で定期的に検索し、「どのような文脈で語られているか」を確認します。特に見ておきたいのは、否定的な指摘が特定の論点に集中していないかという点です。同じ指摘が繰り返されている状態は、商品やコミュニケーションの改善が必要なサインで、放置すると評判の目減りにつながります。

確認した内容は、施策ごとに記録を残しておくのがおすすめです。どの施策で、どのような反応があったかを蓄積しておくと、次の企画時の判断材料になり、同じ種類のリスクを繰り返し起こすことを防げます。

社内稟議・クライアント説明での伝え方

「レピュテーションリスクは大丈夫か」と聞かれたときに、「気をつけます」だけでは説得力がありません。想定されるリスクと、それに対して各段階でどのような確認をしているかを具体的に示すことが大切です。

たとえば、企画書に次のような項目を一枚にまとめて添付すると、承認する側もリスクへの備えを判断しやすくなります。あわせて、確認の判断基準をチーム内で統一しておくと、担当者によって判断が変わることを防げます。

項目

記載する内容

想定されるリスク

発信源別に起こり得るリスクを具体的に書く

事前の対策

表現の確認体制、インフルエンサーの選定基準、PR表記の方針

実施中の確認方法

誰が、どの頻度で、何を見るか

問題が起きたときの連絡体制

判断者と連絡経路、初動の手順

リスクをゼロにすることはできません。だからこそ、「リスクを把握したうえで管理している」ことを示せるかどうかが、施策を前に進めるうえで重要になります。

リスクが顕在化したときの対応の考え方

どれほど備えていても、レピュテーションリスクが顕在化する可能性はあります。そのときに大切なのは、事実確認を優先し、憶測で発信しないことです。

まず行うのは、原因がどこにあるかの切り分けです。投稿そのものが原因なのか、企業側や関係者のSNS以外での行動が原因なのか、ユーザーからの書き込みが発端なのかで、取るべき対応が変わります。

投稿が原因の場合は、内容に事実誤認があるかどうかで判断が分かれます。誤りがあれば速やかに訂正と謝罪が必要ですが、誤りがない場合は、削除せずコメントで説明するほうが適切なこともあります。投稿を削除しても、スクリーンショットが残っている以上、批判が収まるとは限らないためです。状況によっては、沈静化するまで施策全体を一時的に止める判断も必要になります。

また炎上のように急に起きる事態と、信頼の目減りのように徐々に進む事態では、対応の仕方が異なります。急性の事態では初動のスピードが重要になる一方、慢性的な問題では、施策の設計や起用方針そのものを見直すことが必要になります。

まとめ

  • レピュテーションリスクとは、評判の悪化によって事業に損害が生じるリスクです。炎上のような急な事態だけでなく、信頼が少しずつ損なわれる慢性的な形も含まれます。
  • SNS施策に関わるリスクは「自社アカウント」「インフルエンサー」「生活者の口コミ・UGC」の3つの発信源に分けると、それぞれに合った対策を考えやすくなります。
  • 日用品や食品、化粧品では一般ユーザーの発信が購入決定に強く影響する傾向があり、口コミの信頼性そのものが評判を左右します。
  • ステルスマーケティング規制への対応は前提です。そのうえで、生活者から見て誠実な発信に見えるかという視点で確認することが大切です。
  • 企画・選定・運用の各段階に確認項目を組み込み、社内やクライアントに説明できる形で整理しておくことが、施策を続けるための根拠になります。

レピュテーションリスクに関するよくある質問

Q. レピュテーションリスクとブランドリスクの違いは?

ブランドリスクは、ブランドイメージやブランド価値への影響に限定した概念です。一方レピュテーションリスクは、売上や取引関係、採用など経営全般への影響を含むより広い概念とされています。ブランドリスクはレピュテーションリスクの一側面と考えるとわかりやすいでしょう。

Q. SNS施策のレピュテーションリスクは、完全に防げますか?

生活者がどう受け取るかを完全に予測することはできないため、リスクをゼロにすることは難しいのが実情です。重要なのは、想定されるリスクを事前に洗い出し、確認の手順を決めておくことです。備えを整えておけば、問題が起きた場合の影響を小さく抑えられ、社内でも施策を継続しやすくなります。

Q. インフルエンサーを起用するとき、最低限確認すべきことは?

フォロワー数やエンゲージメントだけでなく、投稿全体に占めるPR投稿の割合、普段の発信内容とブランドとの相性、過去に物議を醸した投稿がないかを確認します。あわせて、PR表記の文言と表示位置を依頼時に明確に指定しておくことが欠かせません。

Q. ステルスマーケティング規制に違反した場合、インフルエンサーも罰せられますか?

景品表示法上の規制対象は広告主である事業者です。ただし、規制の適用範囲や責任の所在は個別の事情によって判断が分かれるため、実際の施策では弁護士などの専門家に確認してください。企業側の立場では、違反の有無にかかわらず評判への影響が生じる点も踏まえて設計することが大切です。

Q. レピュテーションリスクの対策は、どの部門が担当すべきですか?

広報や法務が全社的な管理を担うことが多い一方、SNS施策に関するリスクはマーケティング部門が最も早く兆候に気づける立場にあります。施策の企画段階で想定されるリスクを整理し、必要に応じて広報・法務と共有する流れをつくっておくと、問題が起きたときの初動が速くなります。

【執筆者プロフィール】
兼重 成美
株式会社エクスクリエ マーケティングG

インフルエンサー会社でのキャスティング・ディレクション実務を経て、インフルエンサー施策をテーマにしたウェビナーの企画・運営に従事。現在はクロス・マーケティンググループにて、「エクスクリエ」「REECH」「トキオ・ゲッツ」の3社横断でマーケティングを担当。エクスクリエおよびREECHのオウンドメディア運営・コンテンツ制作を担い、REECHではSNS施策の実務情報を広告代理店・メーカーのマーケター向けに発信している。

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