KOCとは?消費者目線で信頼される発信者の選び方と活用法
SNSで商品を調べるとき、生活者が参考にしているのは有名人や専門家だけではありません。特定のジャンルの商品を日常的に使い、自分の目線で使用感を発信している人の投稿も購入の判断材料になっています。
こうした発信者を指す言葉がKOC(Key Opinion Consumer)です。専門家としての肩書きではなく、消費者に近い立場からの発信で信頼を集めるのが特徴で広い意味ではインフルエンサーの一種にあたります。一般ユーザーのクチコミは自然に投稿されるのを待つしかありませんが、KOCは消費者目線の信頼感を保ったまま、施策として起用できます。ただしKOCを起用しても選び方によって成果は大きく変わります。
消費者目線の発信が保たれているか、投稿が実際に見られているかまで確かめて選ぶことが重要です。この記事ではKOCの意味と一般ユーザー・KOLとの違いを整理したうえでREECHの選定基準をもとに成果につながるKOCの選び方と起用の進め方を解説します。
この記事でわかること
✔KOCの定義と一般ユーザー・KOLとの違い
KOCは特定のジャンルに詳しい消費者目線の発信者で、広い意味ではインフルエンサーの一種。一般ユーザーやKOLとの違いと、施策として起用できる理由がわかる。
✔PR投稿比率・視聴率・成長率によるKOCの選び方
消費者目線が保たれているか、投稿が実際に届いているかを、3つの数値で確かめる方法を示す。
✔KOCの起用方法と注意点
依頼から評価までの流れとステルスマーケティング規制への備えを押さえ、自社の商品でKOCを起用するか判断できる。
KOCとは
KOCとは消費者の立場から商品の使用感や体験を発信し、ほかの消費者の購買に影響を与える人のことです。専門家や有名人のような肩書きはなくても、「自分と同じ目線で使った人の感想」として受け取られる点に価値があります。
KOC(Key Opinion Consumer)の意味
KOCは「Key Opinion Consumer」の略で、直訳すると「影響力のある消費者」です。中国のSNSマーケティングでKOL(Key Opinion Leader)と対になる言葉として使われ始めたとされています。
日常の買い物や生活の中で実際に使った商品を紹介しています。成分や機能を専門的に解説するのではなく、「1週間使ってみてどうだったか」「家族の反応はどうだったか」といった生活の中での実感を伝えるのが特徴です。
インフルエンサーとの関係
KOCも広い意味ではインフルエンサーの一種です。ただしインフルエンサーが知名度やフォロワー数で語られることが多いのに対し、KOCは消費者目線で発信しているかどうかに着目した呼び方です。フォロワー数によるインフルエンサーの分類に当てはめると、KOCの多くはナノインフルエンサー(〜1万人)からマイクロインフルエンサー(1万〜10万人)の規模にあたります。
消費者の立場で発信する点は一般ユーザーも同じですが、KOCは特定のジャンルの商品を日常的に使い、継続して発信している「そのジャンルに詳しい一般人」です。発信を追いかけるフォロワーがいるため、「この人が言うなら」と参考にされやすくなります。
フォロワーが少なくても投稿の大半がPR案件であれば、消費者目線の発信とは受け取られにくくなる場合があります。反対に、数万人のフォロワーがいても、自分で選んで使っている商品の紹介が発信の中心であれば、消費者目線の信頼を保っているといえます。
KOLとの違い
KOL(Key Opinion Leader)は専門知識や資格、実績をもとに判断材料を届ける発信者です。KOLが「専門性による信頼」で購買を後押しするのに対し、KOCは「自分と近い人のリアルな使用感」で後押しします。どちらが優れているかではなく、商品と目的に応じて組み合わせることが重要です。
KOCが注目される理由
購買のどの段階でも「一般ユーザー」の投稿が参考にされている
エクスクリエがTikTok利用者を対象に行った調査(2025年8月)では、購買の段階ごとに「参考にする発信者」を聞いています。その結果、商品を新しく知る段階(52.5%)、情報収集の段階(53.3%)、購入するかどうかを決める段階(47.9%)のすべてで、「一般ユーザー(知り合いではない)」が最多でした。



商品を知るきっかけだけでなく、買うかどうかを決める最後の段階でも知り合いではない一般の人の投稿が判断材料になっているということです。
関連記事:【エクスクリエ調査レポート】SNSにおける購買行動~TikTok編~(2025年)
興味を持たれるのは「フォロワー数」より「レビュー・体験談」
同じTikTok調査でどのような投稿に興味を持つかを聞いたところ、最も多かったのは「商品レビュー・体験談」(34.9%)でした。一方で「アカウントのフォロワー数が多い」は13.3%にとどまっています。
エクスクリエのInstagram調査(2025年7月)でも同じ傾向が見られます。Instagramを購買の場面で利用する人のうち、「商品レビュー・体験談」に興味を持つ人は42.7%で最多でした。「アカウントのフォロワー数が多い」は13.1%です。


生活者は「誰が投稿しているか」以上に「実際に使った体験が語られているか」を見ています。消費者目線の実体験を発信するKOCは、このニーズにそのまま応えられる発信者です。
関連記事:【エクスクリエ調査レポート】SNSにおける購買行動~Instagram編~(2025年)
自然に生まれる声を「待つ」から「設計する」へ
一般ユーザーの投稿は商品の満足度が高くても自然に増えるまでには時間がかかります。発売直後やリニューアル直後はそもそも投稿の数が少ない状態から始まります。
KOCは消費者目線の信頼感を保ちながら、企業側が時期や人数を決めて起用できます。発売初期に複数のKOCに使ってもらい、体験談を投稿してもらうことで一般ユーザーが投稿するときの「見本」をつくることもできます。クチコミが増え始めるまでの設計については、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:UGCとは?クチコミが増え始める「最初の投稿」の設計
KOC起用のメリットと限界
KOCを起用すると、主に次のようなメリットがあります。
- 共感されやすい:生活者に近い立場の発信のため、「自分も使えそう」と受け取られやすい
- 比較検討の材料になる:使用期間や使用シーンを含むレビューは、購入前の判断材料として参照される
- 複数名を起用しやすい:1人あたりの費用を抑えやすく、異なる生活シーンの声を集められる
一方で起用するときに気をつけたい点が2つあります。1つは投稿が届く範囲がアカウントによって大きく異なることです。ショート動画はおすすめ表示でフォロワー外にも届くため、フォロワー数だけでは判断できません。選定の段階で視聴率を確認し、実際に見られているアカウントを選ぶ必要があります。もう1つは、起用する人数が増えるほど投稿の質にばらつきが出やすく、やり取りの手間も増えることです。
商品によって向き不向きがある点にも注意が必要です。日常的に買う商品では一般ユーザーの声が購入を後押ししやすい一方、ブランドの世界観が重視される商品では公式アカウントやタレントの発信が参考にされやすい傾向があります。KOCだけで施策を完結させるのではなく、KOLや広告配信と組み合わせて設計するのが現実的です。
成果につながるKOCの見極め方
フォロワー数より「普段の投稿」を見る
KOCを選ぶときに最初に確認したいのは、普段どのような投稿をしているかです。特に次の3点を見ます。
- PR投稿の比率:PR案件ばかりの発信になっていないか
REECHでは直近90日のPR投稿比率20%以内を一つの指標にしています
- 商品との親和性:普段から同じカテゴリの商品を自分で買って紹介しているか
- 生活シーンの具体性:家族構成や暮らし方が投稿から伝わり、ターゲットが自分と重ねやすいか
小規模アカウントほど視聴率の基準は高い
視聴率とは直近90日の再生数をフォロワー数で割った数値です。フォロワー以外にどれだけ投稿が届いているかを示します。
REECHの支援施策データをもとにした目安では、フォロワー10万人未満のアカウントの基準は店頭施策で視聴率460%、EC施策で視聴率250%です。フォロワー規模が大きいアカウントよりも高い水準が求められます。フォロワーが少ないKOCは、フォロワー外にどれだけ届いているかで投稿の効果が大きく変わるため、規模の小ささを理由に基準を下げないことが重要です。
フォロワー規模別の基準値の一覧は、KOLマーケティングの記事で紹介しています。
関連記事:KOLマーケティングとは?専門性だけで選ばないKOL起用の基準
「今伸びているか」も確認する
もう一つの軸が直近90日のフォロワー成長率です。REECHのEC施策データでは直近90日のフォロワー増加率が10%を超えるアカウントは、ほかのアカウントと比べてCTRで1〜2%、CVRで3〜5%以上高い傾向がありました。
フォロワー10万人未満のアカウントの成長率の目安は、店頭施策で10%、EC施策で7.5%です。今まさに見られる機会が増えているアカウントを選ぶことで、同じ費用でも届く範囲が広がりやすくなります。
KOC選定チェックリスト
ここまでの観点を起用前に確認するチェックリストとしてまとめます。

※視聴率・成長率はREECHの支援施策データをもとにした目安です。商材や施策内容によって変わります。
KOC起用の進め方
目的と商品から起用の要否を決める
まずKOCを起用する目的を決めます。「発売初期の体験談を増やしたい」「比較検討の材料を増やしたい」「店頭やECでの購入を後押ししたい」など、目的によって起用する人数や時期が変わります。幅広い層への認知も狙う場合は、視聴率の高いKOCを複数名起用するほか、KOLやタレントの起用、広告配信と組み合わせる方法もあります。
候補を探す
候補は自社商品をすでに紹介している人から探すのが近道です。商品名やブランド名のハッシュタグ、同じカテゴリの商品の投稿などから、普段の発信内容が合う人を洗い出します。候補が多い場合は、インフルエンサー検索ツールでPR投稿比率や視聴率、成長率を確認しながら絞り込むと、選定の根拠を社内やクライアントにも説明しやすくなります。
「使ってから書いてもらう」依頼設計
KOCの価値は生活の中で実際に使った実感を伝えられる点にあります。商品を提供したらすぐに投稿してもらうのではなく、一定の試用期間を設けて生活の中で使ってから投稿してもらう設計にします。
訴求したいポイントは共有しつつ、言い回しや構成を細かく指定しすぎないことも大切です。台本どおりの投稿はKOCらしい生活感が失われ、広告らしく見えやすくなります。あわせて広告であることの表記ルールや、薬機法などで使えない表現を依頼の段階で伝えておきます。
複数名で起点をつくり、反応のよい投稿を広げる
KOCは1人あたりの費用を抑えやすいため、複数名を同時期に起用する方法がよく取られます。生活シーンの異なる複数の体験談が並ぶと見た人が「自分の場合はどうか」を判断しやすくなります。
反応のよかった投稿は広告配信やECの商品ページ、店頭POPなどに二次利用すると効果を広げられます。二次利用には事前の許諾が必要なため、依頼の段階で条件を決めておきましょう。
投稿後は保存率で評価する
KOCの投稿は、いいね数や再生数だけで評価すると価値を見落としやすくなります。体験談は「あとで見返したい」情報として保存されやすいため、保存率(保存数÷リーチ数)を重視して評価します。
エクスクリエのInstagram調査(2025年7月)によると、タイアップ投稿を保存したことがある人の55.2%が、保存した投稿で紹介されていた商品を実際に購入した経験があると回答しています。保存の理由は「商品・サービスの詳細情報を後で確認するため」(56.4%)、「購入・利用を検討するため」(55.8%)が上位でした。

保存は購入を前提にした行動として行われています。REECHでは保存率0.5%以上を投稿品質の高い水準の目安としています。視聴維持率なども含めた投稿後の評価基準は次の記事で紹介しています。
関連記事:KOLマーケティングとは?専門性だけで選ばないKOL起用の基準
関連記事:SNS効果測定の進め方|指標の選び方と評価設計
KOC起用時の注意点
商品提供だけでもPR表記が必要になる場合がある
2023年10月1日から景品表示法にもとづくステルスマーケティング規制が施行されています。金銭の支払いがなく商品を提供しただけの場合でも企業が投稿を依頼したり、内容の決定に関与したりしていれば、広告であることの表示が必要になる場合があります。
KOCは「消費者の声」であることが価値のため、PR表記を避けたいと考える担当者もいるかもしれません。しかし表記のない依頼投稿は規制の対象になるうえ、発覚した場合はブランドや企業への信頼を損なうおそれがあります。依頼の段階で「PR」「広告」などの表記方法を取り決めておきましょう。
参考:ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制|消費者庁
関連記事:レピュテーションリスクとは|炎上だけではないSNS施策の評判管理
「使用感」の伝え方にも表現ルールがある
化粧品や健康食品などでは、薬機法や健康増進法などによって効能・効果の表現が制限されます。KOCが自分の体験として語る場合でも、企業が依頼した投稿は広告として扱われるため、使えない表現は同じです。「肌がきれいになった」「痩せた」などの体験談は表現によっては問題になるため、事前の確認体制を整えておきます。
関連記事:SNS炎上リスクの備え方|インフルエンサー施策を守る実践ガイド
PR投稿が続くと消費者目線が薄れる
同じKOCに短い期間で多くの案件を依頼したり、ほかの企業の案件が続いていたりすると、フォロワーからは「PRばかりの人」と見られやすくなります。起用前のPR投稿比率の確認に加えて、起用後も投稿の頻度や間隔に配慮が必要です。
反応のよかったKOCとは単発で終わらせずに継続的な関係を築くことも検討しましょう。同じ人が長く使い続けている様子が伝わると、体験談の説得力がさらに増します。
関連記事:アンバサダーマーケティングとは?インフルエンサーとの違いと進め方
まとめ
- KOCとは消費者の立場から使用感や体験を発信し、ほかの消費者の購買に影響を与える人のことです。特定のジャンルに詳しい消費者目線の発信者で、広い意味ではインフルエンサーの一種です。
- エクスクリエの調査では、TikTokで購買のすべての段階で一般ユーザーの投稿が最も参考にされており、TikTok・Instagramともに「商品レビュー・体験談」に興味を持つ人が最多でした。
- KOCの価値は自分と近い立場の人のリアルな使用感として受け取られ、購入の判断材料になる点にあります。専門性で後押しするKOLや広告配信と、目的に応じて組み合わせて設計します。
- 選定ではPR投稿比率で消費者目線を視聴率と成長率で届く力を確認します。フォロワー10万人未満のアカウントほど視聴率の基準は高くなります。
- 投稿後は保存率を重視して評価し、ステルスマーケティング規制や表現ルールへの対応を依頼の段階で取り決めておきます。
【執筆者プロフィール】
兼重 成美
株式会社エクスクリエ マーケティングGインフルエンサー会社でのキャスティング・ディレクション実務を経て、インフルエンサー施策をテーマにしたウェビナーの企画・運営に従事。現在はクロス・マーケティンググループにて、「エクスクリエ」「REECH」「トキオ・ゲッツ」の3社横断でマーケティングを担当。エクスクリエおよびREECHのオウンドメディア運営・コンテンツ制作を担い、REECHではSNS施策の実務情報を広告代理店・メーカーのマーケター向けに発信している。
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